メイド イン フランチェスカ!

第七話【恐れ多くて許されぬ!】

僕♂
●学○年生の少年。主にツッコミな本作の主人公。
裕福な家に生まれ育ったのに、割とネガティブで落ち込み屋。
女々しいと言われることにいい加減うんざりしている可愛い少年。
趣味は読書。最近は『カナリアの森』という本を読んでいる。

無限台 篤宗(むげんだい あつむね)♂
源氏名はフランチェスカ。僕の屋敷で住み込みで働くメイド。
世の中の濃い成分を存分に詰め込んだ容姿、声をしている。
見た目で誤解を受けやすいが、とても純粋一途なマッチョ。
趣味は筋トレ。寝る前に各10セットするため朝は遅い。

父♂
屋敷の主人であり、僕の実父。
親馬鹿で笑い馬鹿で、息子とは似ても似つかぬ馬鹿である。
黙っていればクールダンディなだけに、非常にもったいない。
趣味は息子の一日を想像しつつ仕事をする事と映画鑑賞。
外国人に間違って解釈され作られる忍者モノが大好物らしい。

明土 朝与(あかつち さよ)♀
屋敷に蔓延る数十人のメイドたちを統べるメイド長。
と言うと威厳もあるが、その実は笑顔の絶えないウォームビューティー。
物腰の柔らかい口調と おっとりとした声で人々の心を癒す。
趣味は音楽。食事を作りながらの鼻歌は、この世のものとは思えない。

ボブ♀
屋敷の裏庭に棲んでいるとても大きな犬。メス。年齢不詳。
僕の良き理解者として幼い頃からずっと一緒に生きてきた。
『お姉さん』よりは『姐さん』が似合う性格で、面倒見が良い。
趣味は侵入者狩り。鋭い牙と爪であっと言う間に下捌き。

看護士(かんごし)♂♀
ある病院の看護士。当時はキャリア1年目で、慣れ始めた頃合い。
自分の意見を押し通しきれない性格で、
幼少時委員長として注意をしてもクラスのみんなにガン無視されていたタイプ。
趣味はカラオケ。ストレス解消か、激しく叫ぶロックな曲がお好みの様子。

ナレ♂♀
解説兼カメラマン係。回によっては主人公よりも台詞数が多い。
ツッコミが場にいない時、こっそりツッコんであげる優しさの持ち主。
たまにお調子者で、口上っぽい言い回しを始めることもある。
趣味は観劇。最近は専ら『声劇』というものを聞くのが好きらしい。


キャラクター設定資料


↓配役表↓/♂2 ♀2 不問3






- 大浴場 -

ナレ:湯気の霧が立ち込める大浴場。
   洋風のお屋敷なのに風呂は和風な造りで、扉を開けるとヒノキが香る。
   和風な造りなのにシャワーは普通にある。
   その入り口、横開き式の扉の前に、一人の男(全裸)がいた。


父:親子水入らず…嗚呼、何と香ばしい。何と甘美(かんび)な言葉だろうか…。
  これから始まる!私のためだけの!
  エス・エイチ・オー・ダブリュー・ティー・アイ・エム・イー、
  すなわちショー―――タイムッ!!!
  もとい、男同士、一糸まとわぬ裸の宴の始まりだ息子よォォォォオオオオオッッッ!!!


【SE:スパーン(扉を開く音)】


僕:あ、父上。

父:サービスカットはそこかぁぁぁああああっっ!!


ナレ:その視界に飛び込んだのはっっ!!


僕:サービスカットて。


ナレ:水着。


父:邪!!!道ォォォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!!

僕:うるさいなぁ。



篤宗(タイトルコール):『メイド イン フランチェスカ!
             第七話【恐れ多くて許されぬ!】』



父:いかん!いかんぞ息子よ!!
  いくらこの手のシーンのお約束とは言え、お風呂で水着など世界の美学に反するっ!

僕:その世界の美学の基準は誰が作ったんだよ。

父:もちろん私だ!

僕:……。

父:さぁ脱げ。

僕:絶対ヤダ。

父:仕方がない、では野球拳だ!
  …ム、既に私は全裸だが…ZEN!ZEN!気にしないっ!!
  ヌァーッハッハッハッハッハッ!!

僕:早よ体洗え。


ナレ:そんなこんなで5分後。
   少年は湯船の中で、髪を洗う父に問いかける。


僕:…父上、あのさ。

父:ああ、ちょ、ちょっと待ってくれ!今 目開けれないからちょっとだけ!

僕:別につぶったままでいいよ。……僕の名前って、どうやってつけられたの?


ナレ:誰もが一度は親に聞きたい疑問のひとつである。
   シャンプーアフロの父は怪しげに首をカタカタと傾けてこちらを向き、


父:名前の由来か…ふふ、聞きたいか?

僕:聞きたいから訊いてるんですが。

父:ふふふ…そんなに聞きたいと懇願(こんがん)されては致し方あるまい。
  いざ、聞くがいい!3時間の大長編

僕:10分コースで…。

父:善処しよう!
  さて…息子よ、お前が生まれたのは、まだ仄暗い(ほのくらい)夜明け前だった…。


ナレ:回想っ!


- 回想 -


父:息・子・誕・生ォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!


ナレ:それは、まだ仄暗い(ほのくらい)夜明け前の病院での事であった。
   天をも劈く(つんざく) アルマゲドン・ヴォイスが病院中に響き渡ったのだ。


朝与:おめでとうございますわ、ご主人様。

父:ありがとう!ありがとう!!嗚呼、私の可愛い息子ォ、息子ォ!

看護士(小声で):ちょっ、お静かにしてください!
        他の患者さんにご迷惑が…ああっ、赤ちゃんを振り回さないでっ…!

ボブ:へぇ…人間の赤ん坊ってのは、なかなかおいしそうじゃないか。


ナレ:男は赤ちゃんを抱きしめ小躍りし、
   メイドたちは拍手で祝い、
   看護士たちは慌て、
   大きな犬は鼻を鳴らし。


父:おお、お前も祝ってくれるか?
  嗚呼そうとも、誕生とは何という、何という芸術アーティスティック!!

看護士:うわっ!?な、何で院内に犬が!


- 中断 -

僕:え?いや、何でボブ病院に連れてきてるのさ。

父:今その説明をすると10分を越えてしまうぞ息子よ!割愛するしかない!!

僕M:ぐっ、気になる…!

父:が、この時ボブにはまだ名前がなかったとだけ言っておこう。

僕:へ?

父:続きだ諸君!


- 回想再開 -

ボブ:ペロ…ふむ、これは美味。微かに香る血の香りが何とも…

看護士:赤ちゃんが、赤ちゃんが犬に食べられっ…ひいいっ!!

朝与:あらあら、さっそくなついてますわねぇ。

父:ハハハッ、よい兄弟になりそうだ。

看護士:そ、そんな笑ってる場合ですか!?は、早く助けないと…あああでも怖いっ…!

朝与:ところでご主人様、お名前はもうお決まりなのですか?

父:おっと、そうだった!
  あれこれ苦心して良い名前を模索し、
  今日この日に生まれて来る子の顔を見て決めるとそう決めたのだったな。


ナレ:ポム、と手を打って、さっそく我が子の顔を見ようとする。
   犬もまた、その雰囲気を感じ取ったように赤ん坊を床へそっと置く。
   生まれたての赤ちゃんをすぐに連れまわしたり、
   犬にくわえさせたり、その辺に置いたりするのは、
   衛生上あまりよくないから、みんなはマネしちゃだめだぜ♪


ボブ:ふふ…軽い冗談さ、冗談。そんなに慌てずとも ほれ、返すよ。


看護士:飽きた!?ちゃ、チャンスっ!そ〜っと、そ〜っと……いまだっ!!


ナレ:看護士、赤ちゃんを奪取(だっしゅ)!そして全速力ダッシュ!!


ボブ:む?何故逃げるんだい!それはこいつの赤子じゃないか、返してやりな!!

看護士:お、追ってきたぁっ!?ひっ、うわぁぁぁぁぁああああ来るなぁぁぁああっっ!!

朝与:…本当に。

父:よい兄弟になりそうだナーッハッハッハッハッ!!
  ナハッ、ナハ、ハ、さて…そうだな、赤ちゃんだから名前は「アカ」というのはどうだろう。


ナレ:父よ、それでもあれこれ苦心して良い名前を模索したのか。


朝与:ご主人様、赤ちゃんはいずれ大人になりますわ。

父:そ、そうか、それもそうだな…
  ならば、あの息子がいずれ最初に発するであろう言葉を予測して、もじって付けよう。

朝与:赤ちゃんが最初に発する言葉…ですか?
   そうですね…メジャーなものですと、
   「ばぶぅ」や、「だぁ」、「まんま」「うー」などでしょうか…

父:ふむ、「ばぶぅ」…よし、では「ボブ」だ!おお、これは名前っぽい!

朝与:ご主人様、日本人と日本人の間に生まれた日本人の子ですわ。

父:んん、そうか…「ボブ」だと確かに外国っぽい名前だな……
  よし、じゃ あの犬の名前をボブにしよう!
  兄弟である我が息子の最初に発するであろう言葉が名前になるのだから、
  これはもう光栄極まりない名前だろうっ!
  しかも英語スペルにすると上から読んでも下から読んでもB・O・B!
  嗚呼、自分の!自分のウィットが怖いっ!ヌァーッハッハッハッハッ!
  ノヒョーヒョヒョヒョギャラギャラギャラ、モケケケケケケコイーンコイーンコイーンッ!!

朝与:ご主人様、あの犬はメスで…

看護士:助けてぇぇぇぇえええええっっ!!


- 回想終了-


父:というわけで、ちょうど10分だナーッハッハッハッハッハッ!!

僕:ちょ、それボブの名前の由来じゃんかっ!!!

父:おや…何か間違えたかな?まぁ小さなことなど気にしていてはハゲるぞ息子よ!!
  どれ、そのスクール水着の下はそろそろちゃんと生え…ぶぇーはっはっはっはっはっ!!
  ギャーハ、ギャハーホーイヘッヘラヒーッ!


ナレ:ね、念のため言っておくが、スクール水着は男子用だっ!!


僕:父上まで僕をバカにしてっ!!
  どうせ僕の名前の由来なんて、大した理由もないんでしょ!?
  そんなんだからみんな僕の名前、忘れちゃうんだ…っ!
  ……もういいよ。僕、先に上がるから。


ナレ:父の変態笑いをBGMに、疲れた、というように少年は湯船から上がった。


父:フヒー!フヒー!フヒー!ヒー!ヒー…フー、まぁ待て息子よ聞きたまへ。

僕:…何、まだバカにし足りないの…?

父:いいか息子よ。
  どんな子供の名前も、ひとつとしていい加減に付けられるものはないんだ。
  世界中の子供たちの名前…そこには、
  世界中の親たちの、子供への願いが沢山詰まっている。
  言わば子供の名前とは、子の幸せを願う親の祈りに溢れる宝箱だ。

僕:! う…うん。


ナレ:体に泡ビキニの男は、急に父の顔になっていた。
   少年の足は止まり、父へと向き直る。


父:お前もまた、自分の子供に名を付けるとき気付くだろう…どれだけ愛おしいか!
  名前ひとつ付けるために、一体どれだけ悩むことかっ!!!
  …そしてその悩む時間さえ、いかに愛おしいことか。

僕:……ち、父上、あのさ…

父:あ、ちなみに自分の子供と言っても、ぶふっ、
  別の意味での息子に名前を、という意味ではないぞ?
  ふふ、ふふふ、いくら何でも自分の息子、ふひっ!
  いや、意味が分からんなら分からんままでフヒャーハハハハハハハハ

僕:やかましいわぁぁぁあああああ!!!!


ナレ:かいしんのいちげき!
   バールのような風呂おけは一直線に美しい軌道を描き!


【SE:ゴッ(鈍い音)】


父:はらほれひれはれ〜!!

僕:父上のアホォォォォォォォオオオオオオオオオオオッ!!


ナレ:少年が駆け去った後の浴場には、赤いモザイクが残された。
   ふと、壁の一部がハラリとめくれて、筋肉ダルマが現れる。


篤宗:なるほど…。兄者、それであんなに…。


ナレ:隠れ蓑をしまい、脇の下に抱えて。
   ダルマは少年の後を追った。
   仕えるべき本当の主人(モザイク)は放置のままに。


父:おお、パ○ラッシュよ…

朝与:あらあら、まあまあ…。


ナレ:助けがきたのは1時間後のことだったそうな。


朝与:どうなされたのです、ご主人様?
   こんなところで各シモを隠しもせずに寝ている場合ではありませんわ♪

父:ハッ!?そうとも、世界が私を待っている!!

朝与:ええ、早く諸々のモロを隠さないと未来が失われてしまいますわ。

父:ヌァーッハハハハハ!そぉ〜とも、明日が来なくてはたいへん困るからな!


- 中庭 -


僕:何だかみんなが…世界が僕を忘れようとしてるみたい。


ナレ:中庭。ボブの住まいである。
   少年の抱擁(ほうよう)を、犬は優しく受け止める。


僕:ボブ…ボブは僕の名前、分かるよね?ずっと僕と一緒にこの家にいたんだもん。

ボブ:坊…どうかしたのかい?こんな悲しい顔をして…。
   ほれ、わたしの宝物の『古びた頭蓋骨』でも見て、元気をお出しよ、坊。

僕:ありがとう、ボブは分かってくれるもんね…。


ナレ:犬が差し出した人間のドクロが何を指し示したのか分からないが、
   少年は犬の頭をなでて目をつぶった。


ボブ:ん…少しは元気が出たかい、坊。…坊?

僕:スゥ……スゥ……

ボブ:ふふ…寝ちゃったか。


ナレ:一日が5話にも渡って疲れたのか、少年は数秒で眠りの森へ招かれた。
   そっとその頬を舐めたあと、犬は屋敷へと鋭い目を向けた。


ボブ:…そこにいるのは分かってる。出てきなよ、デカブツ。

篤宗:ハッ!?


ナレ:ボブの鼻が向いた先。
   屋敷の柱の幅からかなりはみ出して隠れていた男は、
   観念したようにその姿を月光に照らし出した。


篤宗:気配に感づかれていた…か。まだまだ俺も修験(しゅげん)が足りぬ。

ボブ:まぁあれだけはみ出していて分からぬ者がいるかどうか、だが…。


ナレ:猛獣同士、会話が成り立っているような気がするのは気のせいだ!
   少年を抱く犬に歩み寄り、男はひざまずいて手を広げた。


篤宗:こんなところで眠ってはお風邪を…。ボブ殿、兄者を預かっても良いだろうか。

ボブ:……。


ナレ:見た目は暑苦しいが、その瞳はどこまでも澄み切って、まっすぐで。
   暫しの後。


ボブ:…寝床まで連れてっておやり。起こさないように、ゆるりとね。


ナレ:犬は鼻がしらで少年の体を支え、男の方へと差しやった。


篤宗:恩に着る…失礼。


ナレ:眠る少年の小さな体を太い腕の中に抱いて、小さく礼をする。
   屋敷の中へと きびすを返すとき、ふくよかな黒髪が月の光を受けて、
   波のようにきらめいた。


ボブ:…大丈夫さ、坊。お前さんは生まれたときから、色んな人に愛されてる。
   運命の神さんに そっぽ向かれたって、周りのヤツが坊を放っときゃしないよ。
   だから坊…明日が来るまで、今日はおやすみ。

篤宗M:兄者…忘れるはずがなかろう、俺の命を救ったその人の本当の名を。
    傍に仕えることを許してくれた、優しきお方のことを。
    心配召されるな、兄者!
    たとえ世界中の皆が兄者のことを忘れても、俺は絶対忘れまいっっ!!


- 教室 -


僕M:何だかみんなが…世界が僕を忘れようとしてるみたい。


ナレ:席に座ったまま、自分が呟いた言葉を思い出していた。
   教室の扉が開き、親友の姿が目に入る。


僕:あ、明来(あくる)、おはよ……う?


ナレ:親友は まるで少年に気付いてないかのように通り過ぎて、
   他のクラスメートと挨拶を交わして笑った。


僕:え……?あっ、ひ、久嶺(ひさみね)さん!おは……


ナレ:仲の良いクラスメートが、また自分のいる場所を通り過ぎた。
   世界が早送りになって、誰も自分に声をかけずに過ぎていく。


僕:いっ…嫌だっ…


ナレ:フッと、自分の座っていた席が消える。
   教室の日常から、自分という存在が失われてゆく。


僕:うっ…うわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああっっっ!!!

- 僕の部屋 -

僕:あ…あ?


ナレ:自分の叫び声で目を覚ます。
   真っ暗な部屋。ベッドの上だった。
   時計の短針は2を指している。


僕:あ…寝てたんだ、僕。…ん?


ナレ:ふと、左手の重さに気がついた。


篤宗(寝息):ズモモモモ…ブールフシュン…

僕:のわっ…!!?


ナレ:少年の手に重ねられた、ごつごつした手。
   座ったまま、巨体がそこで眠っていた。


篤宗:ブールフシュン…ズモモモモ…ブールフシュン…

僕:凄い寝息…というか、こんな近くで叫んだのによく起きないでいられるなぁ。


ナレ:うるさいはずの寝息も、心地良く感じた。
   左手の熱が、自分がここにいることを教えてくれた。


僕:ふふっ…ヘンな寝顔。


ナレ:小さく笑って、少年は再びそっと目を閉じた。


- 廊下 ・ 僕の部屋 扉前 -


朝与(小声で):…気付かれた…というわけではなさそうですわね…。


ナレ:細く開いた扉を そうっと閉めた。
   夜中の廊下に、ろうそくを持った沢山のメイドたちがそこにいた。


朝与(小声で):大丈夫ですわ、皆さん。続きに取り掛かってください♪



- 僕の部屋 -


【SE:ドォーン(爆発音)】
【SE:バァーン(破裂音)】


僕:ぬわっひぃい!!?


ナレ:朝。二人は爆発音で目を覚ました。


篤宗:な、何事か!敵襲か!?伏せろ、伏せるのだ兄者ぁぁああっっ!!

僕:うっ、うひぃいっ…!

篤宗:俺が様子を!


ナレ:篤宗(あつむね)は窓の傍の壁に張り付き、濃い瞳でそっと窓の外を見る。
   少年は混乱の中、布団の中から顔だけを出し 声を投げる。


僕:どっ、どうですか無限台さんっ!?敵は見えますかっ!?

篤宗:兄者…花火だ!

僕:へっ?

【SE:ヒュルル〜…ドォォーン(打ち上げ花火)】


ナレ:布団を引きずり、少年も窓から外を見た。
   窓の外。明るい空に鮮やかに。


僕:花火…だ。

父:息子よぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおっっ!!!

僕:!


ナレ:父の声に、表庭(おもてにわ)へ視線を落とす。
   そこには…


僕:う…うわぁ…!


ナレ:一面に敷き詰められた、色鮮やかな花の絨毯。
   父と屋敷中のメイドたちが手を振って、口々に声をあげた。


父:息子よ、お誕生日おめでとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうっっ!!!

朝与:おめでとうございまー――――す!!

僕:……。


ナレ:ぽかんと口を開けたまま、声を失った少年の隣。
   濃厚な笑顔が花咲いた。


篤宗:兄者…お誕生日、おめでとう。

僕:……。

篤宗:兄者…兄者の名前をそのまま呼ぶ事は、我ら給仕には恐れ多くて許されぬ…。
   だが、皆が ちゃんと知っているのだぞ、兄者。あれをよく見るのだ。

僕:え…?


ナレ:示された庭へ目をやった。
   もう一度、よく見てみた。
   白い花の床の中で、赤い花が文字を作っている。
   その文字が…少年の名前を祝っていた。


僕:……っ!!

篤宗:兄者の名前は、皆それぞれの心の中に深く、深く刻んである。
   たとえ一度聴いただけでも、忘れることなど決してあろうものか。

僕:うわ…


ナレ:ぼろり。
   その言葉が鍵を開けたかのように、
   少年の目から涙がぼろぼろとこぼれ出した。
   パジャマの袖で押さえても、拭いきれないくらいの涙が。


篤宗:な、なっ!?あ、兄者!大丈夫か、いやすまぬ、俺が何か無神経なことを…

僕:いえ…ふふっ。

篤宗:ぬぁ…


ナレ:少年は頬を濡らしながら、笑顔を少し傾けて。
   それから、窓を勢いよく開け放つ。
   花火の青空。色彩の庭園。
   そして、自分のことを決して忘れないタイセツな家族へ。


僕:ありがとー――――――――――うっ!!!


- 次回予告 -


朝与:あ、次回あるんですか?

ボブ:たしかに終わり方が、何だか最終回のノリだったねぇ。

父:次回、メイド イン フランチェスカ、最終回!私のオンステー――――ジッ!!
  ヌァーッハッハッハッハッ、ギョホヒョヒョヒョー!ハギャーヒーニャフォーフォー!!!

ナレ:次回、『メイド イン フランチェスカ! 第八話【縄の香りに酔いしれな!】』

僕:最終回は、まだまだ先だよっ!

父:ハギャーヒーニャフォーフォーッ!!!









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