メイド イン フランチェスカ!

第四話【ナイスガイとストロベリーレディ】

僕♂
●学○年生の少年。環境柄、将来がちょっぴり心配な主人公。
メイドを多く抱える立派なお屋敷に住む富豪の息子。
家庭環境の所為か、専らツッコミ専門だが、天然ボケのきらいがある。
名前はまだない…訳ではないが、第三話の時点で未だ出てこない。

無限台 篤宗(むげんだい あつむね)♂
僕の住む館の給仕。源氏名はフランチェスカ。
デカくてマッチョで重低音で、とにかく暑苦しい。
メイド服がもう哀れなほどに似合わない。
でも性格は真っ直ぐで愛に溢れているのでもう手が付けられない。
2話で胸元が破けたメイド服は裁縫して直した。絆創膏50枚。

無限台 地子(むげんだい ちいこ)♀
篤宗の実の妹にして、やはり僕家の給仕の幼女。
源氏名はチッチョリーナ。
身長は兄の半分。体重は…ちょっとここでは。
歳が知れるとさすがにメイドはまずいだろうという事になるので機密事項。
身体能力抜群だが破壊力は不明。環境のおかげでツッコミ担当。

父♂
僕の実父。センスの悪さと高笑いの狂いっぷりはドウニモトマラナイ。
最近は下ネタばかりでロクに息子に構ってもらえず、今夜も枕を湿らせる。
3話には出てこなかったのだが、これについてメッセージを頂いております。
「いやはや、ご期待に添えず申し訳ない。
 夜の期待には100%お応ブワーッハッハッぬほっもふっふクキャキャキャキャ」
…えー、先ほどの映像で一部不適切な発言がございました、たいへん失礼致しました。

明土 朝与(あかつち さよ)♀
僕家の給仕をまとめる、とても優しい微笑みが武器のメイド長。
その名前はまさに、メイド長になる為に生まれて来たと言って過言ではない。
波風立たぬおっとりした性格と、仕事をテキパキこなすタフさを併せ持つ。
パッと見とても完成された人だが、たまに天然ボケ。年齢不詳。

雛形 明来(ひながた あくる)♂
僕のクラスメイトの少年。口を開けばボケが出る。
僕とは幼稚園時代からの腐れ縁で、僕との漫才的な会話を趣とする。
人を馬鹿にしてるようにも見えるが、周囲への気配りを欠かさない。
将来漫才師になって世界中を笑わせたいと夢見ている。

久嶺 あかり(ひさみね あかり)♀
僕のクラスメイトで趣味は筋トレの快活な少女。
パンピーより低い位置にツボが存在しているのか、笑い上戸。
耐えようとしているが全然耐えられてない。
運動神経が良く、負けず嫌いな性格だが、くすぐりに極度に弱い。

ナレ♂♀
解説兼カメラマン。台詞の量がほぼ毎回主人公クラス。
なんと今回は台詞数ダントツトップなのでご注意。
今回は場に足りない成分を補う技のキレが冴えるらしい。
夜行性で朝はテンションが下がり気味だけど根性で乗り切っちゃう。


キャラクター設定資料


↓配役表↓/♂3 ♀3 不問2






- 花畑 -

僕:ふふふっ…フランチェスカ、こっちだよ〜。

篤宗:ふははは、兄者め!あいや待たれよ!

僕:つかまえてごら〜ん♪アハハハハハ…

篤宗:フハハハハハ…兄者、待たれい、待たれ〜い…

僕:アハハハハハ…

篤宗:ヌハハハハハ…


地子:あ……ま……あに…


篤宗M:俺を誘い、惑わすように舞う兄者。
    北の地の、色とりどりの草花に囲まれて、俺と兄者はドロケイらんでぶー…
    フハハハハハ、フハハハハハ…

地子:兄様。

篤宗:嗚呼、待たれよ兄者、そっちは未開の地で…

地子:とっとと目ぇ覚ましやがるです、こぉ〜んのっ…すっとこどっこいいいいいっ!!!


ナレ:地子(ちいこ)の攻撃!空中2回転ひねり→脳天かかとおとし!!
   クリティカルヒット!


篤宗:……ぬ?朝か…ぬふぅ。


ナレ:1のダメージ。




朝与(タイトルコール):『メイド イン フランチェスカ!
             第四話【ナイスガイとストロベリーレディ】』



- 篤宗の寝室 -

篤宗:良き朝だな。おはよう、チッチョリーナ。

地子:ちぃこです。ハァ…もう10時半です、兄様。

篤宗:照れる事はないぞ。良い名前ではないか、チッチョリーナ。

地子:蹴りますよ?

篤宗:ふははは、朝から元気だな!


ナレ:少女が繰り出したみぞおちへの蹴りを喰らうも、
   何事もなかったかのように男は笑った。
   無限台地子(むげんだい ちいこ)。
   マッスルメイド・フランチェスカの実の妹にして、
   共にこの屋敷で働くメイドの一人である。
   身長100センチ、たいじゅ…


【SE:ゴゴゴ…(マグマの滾るような音)】


地子:……。


ナレ:……コホン。えー、たいじゅ


【SE:ビュオオオ…(暴風音)】
【SE:ビシャーン!(稲妻音)】
【SE:ピー(放送禁止コード)】
【SE:ピー(放送禁止コード)】
【SE:ピー(放送禁止コード)】


地子:………。


ナレ:スリーサイz


【SE:どごーん!(爆発音)】


篤宗:10時半か…いくら父君が寛大(かんだい)とは言え、
   そろそろ起床して働かなくてはな。

地子:兄様、そろそろメイドとしての自覚を持つです。
   さぁ、さっさと起きるです。シーツが洗濯できないです。

篤宗:ん。すまぬな、チッチョリ…

地子:ちぃこです。

篤宗:そんな頑な(かたくな)なところも愛い(うい)ものだ。

地子:なっ…そ、そんな言葉で、だまされたりしないですっ!早くどくですっ!!

篤宗:嗚呼、分かった分かった…。


ナレ:頬を真っ赤にしてまくし立てる妹の頭をなでながら、
   男はようやくよっこいしょと立ち上がった。
   同時、可及的(かきゅうてき)速やかにシーツが回収される。


篤宗:さて、俺の午前の仕事は何だろうな。

地子:毎朝寝坊しておいて、ネグリジェ脱ぎながら吐けた台詞じゃないですよ兄様。
   ほら、もう少し慌てて焦って急ぐですっ!

篤宗:そうは言うが…俺がこの屋敷の給仕服に着替えるのには、
   どうしても時間がかかってしまうのだ、チッチョ…

地子:ち・ぃ・こ・で・す!

篤宗:いやしかし、父君は本当に心の広いお方だ。昨夜も…


- 回想 -


父:おぉ、フランチェスカ君!
  今日はまたずいぶんとセクスィーで妖艶(ようえん)な格好ではないかっ!


ナレ:メイド服の破けた胸元からA地区C地区の はざまをさらけ出したフランチェスカ。


篤宗:すまぬ、父君…誇らしい事があってうっかり胸を張ってしまい…。

父:ぬぁんとぉ!
  服の生地(きじ)が躍動(やくどう)する胸の圧迫に耐えきれずに弾け飛んだというのか!!

篤宗:申し訳ない…

父:ぬ…ぬぬ…ぬぬぬ…

篤宗:ぬ…?

父:ヌァーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

篤宗:ぬおおっ!?

父:ぶへっ、ぶへへっ、
  むふふふふふふひひひひひヒョヒョヒョヒョゲハゲハゲハぷぷぺぺぽひー!!!

篤宗:ち、父君!大丈夫か!?そんなにショックだったか!?すまぬ父君、弁償は体で…

父:ダーッハッハッハッハッ!
  ナーハハハ!ナーハハハ!ナーハハハ!
  ナハハ、ナハッ…いや、いや、いやいやいや…いいのだよ、給仕服の一着や二着!
  そもそも君の体に合う給仕服がなかったのが問題だったのだ!

篤宗:う、うむ…。

父:何も気に病む事などないぞ、フランチェスカ君!
  すぐにでも君のはちきれんばかりのその胸を、
  十二分に包み込めるくらいのサイズのメイド服を
  オーダーメイドで取り寄せるとしよう!!

篤宗:なっ…ち、父君!なんと、なんと寛大なお方だろうか!!

父:ああ…それまでは今あるサイズのもので我慢してくれたまえよ?
  どうしても窮屈(きゅうくつ)であるだとか、
  辱め(はずかしめ)の想いが渦巻いて我慢が出来ないと言うのであれば、
  或いは裸エプロ…… ブフッ!フフフハハハハハ、ギャーハハハハハハハハハッ!!
  ゲッホ、うぐへへへへ、むほひょひょひょっ!!!


- 回想終了 -


篤宗:そんな心の広い人だから、朝が遅くとも何もお咎めなさらないのだ。
   嗚呼、父君はなんと素晴らしい人なのだろう…

地子:だからってそれにかまけて朝の仕事をしないのはだらしないです、兄様。
   ほら、口動かしながら手もちゃんと動かすです。

篤宗:ヌハハハ、相変わらず手厳しいな。面目も丸つぶれというものだ。

地子:朝寝坊してるようじゃ、つぶれる面目なんてないです。

篤宗:おお、これは一本取られたな!フハハハハハ!


ナレ:やっとの事で着替えを終え、豪快に笑いながら、
   フランチェスカこと篤宗氏は、早々に部屋を出たのだった。


地子:笑ってる場合じゃないです…って、ちょっ、待つです兄様!
   それは前掛けじゃないです!!


ナレ:ご自慢の白ふんどしを腰に巻いて。


−廊下−


篤宗:おお父君!早い起床だな!

地子:ちゃんとご主人様って言うです、兄様!…あ、お、おはようございます、ご主人様!


ナレ:父があらわれた!

父:そう…そのとき私の背を引き止めたのは、
  この屋敷に響く音の中で最も低い音と最も高い音、二つの音の奏でる第11幕だった。
  私はその舞台の前で、祝福の拍手(かしわで)を打つために足を止めた。
  振り返ると、大きなナイスガイと小さなストロベリーレディだった。
  嗚呼、おはよう二人とも。

地子:ご主人様、考えてる事が何故か文芸的表現を駆使されて、
   しかも包み隠さず表沙汰(おもてざた)になってるです。

父:おっとこれは失敬、ま・も・る・ぜ・ど・あ。

篤宗:それを言うならマドモアゼルだ、父君。

地子:兄様、敬語を…使うですっ!!!


ナレ:地子の攻撃!
   後頭部への後ろ上段回し飛び蹴り!
   会心の一撃!


篤宗:…む?蝿か…?


ナレ:1のダメージ。
   身長差が二倍は裕(ゆう)に


父:ほう…身長差が二倍は裕(ゆう)にあろうか、私ですら見上げるガイの後頭部に、
  レディの全身全霊ハイキックがめり込んだというのにも関わらず、
  ダメージはほぼ皆無とは…どういうことだ?
   @はたして彼が打たれ強いだけなのか、
   Aはたまた未発達な彼女の撃に威がないだけなのか、
   B或いはこの世界にのみ存在する特殊な物理的衝撃容認力の成せる技か。
  ふぷふふっ、ふ、いや、実に興味深い…傷は浅いが興味は深まるばかり、とな。
  …ぶぶっ!ブハハハハ、ヌゴハハハハハ、ハーッハッハッハッハッハッ!


ナレ:ああ、私の仕事の存在価値が危うい…っ!


地子:また発作が始まったです…。

篤宗:だ、大丈夫か、父君!

地子:あ、また!いい加減に敬語を覚えるです、兄様!あと父君って言うのも駄目ですっ!

父:プゲラッチョォォォォォオオオオ!!!


ナレ:それもう全然笑い声じゃないだろ、とツッコミたくなるような笑い声と、
   それを取り巻くソプラノとバスの三重奏が家を震撼(しんかん)させる。
   と、そこへ…


朝与:あらあら、なんだか楽しそうねぇ?

地子:ああっ、メイド長ですっ!

篤宗:おお、おはようメイド長!

父:ヌピョピョピョピョー!!


ナレ:四重奏へと進化。
   もとい、メイド長が現れた!


朝与:どうしたの?ずいぶん賑やかねぇ。

父:ナーハ!ナーハハ!ナーハハハ!

地子:あの、ご主人様のいつもの発作で…

朝与:まぁ…ご主人様、談笑(だんしょう)から零れ(こぼれ)たエクスタシーな衝動を
   抑えきれなくなっている場合ではありませんわ。
   世界があなたを待っていますよ?

父:ナーハハハハ・ザ・ワールド!さて。

地子:止まったです!?さ、さすがメイド長ですっ…!

父:そういう訳で諸君、
  いつも通りメイド長の言う事をしっかり聴いて頑張ってくれたまえよ。
  諸君の働きにはチョー期待している。


ナレ:そう言って左手でフランチェスカの肩をポムポムと叩き、
   右手でチッチョリーナの頭を撫でる。


父:ちなみに、この両手の運動を何回かごとに左右入れ替えて繰り返すと、
  左脳を鍛えられるらしいぞ。

篤宗:ち、父君…その…くすぐったい。

地子:あぅっ…はぅっ…痛いです、ご主人様…ふきゅっ!

朝与:今この場面で左右入れ替えている場合ではありませんわ、ご主人様。


ナレ:分かりやすい解説!
   左手、フランチェスカの肩をナデナデ。
   右手、チッチョリーナの頭をポムポム。


父:おっとすまない、そんな事をしている場合ではなかったな!

地子:痛いです〜!

篤宗:うう、くすぐったい…。

父:世界が私を待っている!アディオス、アミーゴ、アデュー!


ナレ:ギリギリまでナデナデポムポムを満喫(まんきつ)し、
   主(あるじ)は走り去っていった。


朝与:再見(ツァイチェン)。

地子:痛かったです…

篤宗:少し気持ちよかった…


ナレ:メイド長は朝陽より眩しい微笑みで手を振り。
   チッチョリーナは泣きべそで頭をおさえ。
   フランチェスカはそっと頬を赤らめて。
   それぞれの想いを胸に、アミーゴの旅立ちを見送るのであった。


朝与:…さぁ。


ナレ:息を押し出すように言って、メイド長が二人へと向き直った。
   いつもと変わらない眩しい笑顔で。


朝与:お仕事、しましょうか。

地子:は…はいですっ!

篤宗:うむっ!任せておくのだ!

- 数分後・廊下 -

篤宗:♪今日の〜 仕事は 窓みがき〜
     フンフフンフ フフフフン フッフフフフ フン〜ヌグッ!?

地子:どうやったら鼻歌のところで舌噛めるですか。


ナレ:仲良く窓ふきにいそしむ兄妹の図。


篤宗:ひとつふいては兄者のため、ふたつふいては兄者のため、みっつふいては兄者の…

地子:むぅ…前から気になってはいたのですが、
   兄様はどうしてそんなに坊っちゃまが好きなのです?

篤宗:いつつふいては

地子:シカトするなですっ!


ナレ:湿った布が160km/hで飛んだ。


篤宗:むっつふいては

地子:…ハァ、もういいです…。

篤宗M:そう…兄者との出会いはあの日…。


- 回想 -


【SE:ズシン!ズシン!】

篤宗M:ハァ、ハァ、ハァ…こ、ここまでかっ…


ナレ:電柱の影に隠れた篤宗(あつむね)へと近づいてくる、巨大な足音。
   その一歩は悪意に満ち、その一歩は狂気に満ちる。


篤宗M:いかん…このままでは、喰われる…!


【SE:ズシン…】


ナレ:大きな大きなもののけの影が伸びて、電柱の隣で止まった。
   嫌な汗がふき出すように流れ出て、水たまりを作っていく。


篤宗M:も…もうだめだ…


ナレ:…と、そ の 時!!


僕:あ、猫だ〜。

篤宗:ぬ!?


ナレ:なよなよとした声。
   それに導かれるように、怪物の影の首がグニャッと曲がって違う方を向いた。


僕:おいで〜、おいで〜…あ、えっと…ほら、パンだよ〜。
  今日の昼ごはんの残りのパンだよ〜。


【SE:ニャ〜ン(猫の鳴き声)】


僕:ふわぁ、きたきたっ!
  あ〜、かわいいなぁオマエ…ほら、もっと食べていいんだよ〜?
  よしよ〜し…ふふふっ。

篤宗:あの方は…


ナレ:怪物(猫)の頭を撫でさする少年の姿が、
   とても大きく、神々(こうごう)しく見えた。


篤宗:まさに、まさに俺の命の恩人だっ…!!!

僕:ふふ…もうないよ〜。
  って、あっ…もう、なんだよ〜!
  もう少しなでさせてくれたっていいじゃん、ケチ猫〜!
  …ふふふ…またパン持って帰ってこよっと。

篤宗:お礼を言わねば…もし!

僕:さて、帰ろっと。

篤宗:もし、そこの…嗚呼、ちょっと!
   走らずに、俺の話を聞…待つのだあああああっ!!!

- 回想終了 -

篤宗:嗚呼、兄者…兄者ァァアアアア!!!

地子:んも〜、叫んでないでちゃんと仕事の手を動か…ひゃわっ、よだれ?!
   兄様、よだれですっ!!


- 学校 ○年☆組 教室 -


僕:ヒ…ッ!?

明来(小声で):ど、どした?

僕(小声で):な、なんか今、寒気か…


【SE:キーンコーンカーンコーン(チャイムの音)】


ナレ:4時間目、終了。
   隣り合った席に座る二人の少年の、金髪の方が話し出す。


明来:大丈夫か、微少年。保健室、行くか?

僕:いや…もう大丈夫。
  なんか、もの凄くおぞましい声が遠くで聴こえたような気がしたんだけど…

あかり:ボクくん、さっきの授業の終わりの方で、なんか変な声出してなかった?

明来:おう、レディ耳いいね。ネコミミ?ウサミミ?

僕:それを言うならジゴクミミ。

あかり:ぶっ!


ナレ:遠い席から来た少女を漫才で出迎えて、昼休みが始まる。
   お弁当を囲んで、3人の語らい。

あかり:ふーん…寒気、ねぇ。ボクくんと先生の声以外の声なんて、聴こえなかったなぁ…

明来:この微少年はアレだ、人には聴こえない声とか聴こえるんだ。
   汽笛(きてき)とかな。

僕:人に聴こえるよ!!

明来:超音波とか。

僕:こうもりか?僕こうもりか!?

明来:アルファ波とか。X線とか。

僕:それもう聞くものじゃないから。

あかり:アハハッハハハハハハ、ハヒィッ、ゲッホゲホ…
    ちょっ、あんたたち、ちょっ…ぷくくくっ…!!


ナレ:一名、瀕死。


明来:死んだら死因は笑い死にだな。○学生、学校で変死!死因は笑い死に!?

僕:妙に新聞っぽく言わなくていいよ!
  久嶺(ひさみね)さん、しっかりぃ…うわぁっ、白目むいてるっ?!?


ナレ:5分後。


あかり:君たちはもう少し、自分たちの会話が漫才になってる事の自覚を持ちなさい。
    じゃないとあたし、いつか本当に笑い死ぬから。

明来:真顔で「笑い死ぬから。」とか言われてもなぁ。
   ほら、俺らいつか漫才師として生きてくつもりだし。

僕:いや、ならんし。

あかり:ぶっ…


ナレ:烏龍茶爆弾が爆発。
   5分後。


あかり:もうやだ…

明来:昼休みにマジ泣きすんなよ、茶がまずくなるぞ。

僕:お前がまずくさせてるんだよ。

あかり:ボクくんもだよ…

僕:うえ!?

あかり:でもなんていうか…ホント2人は漫才師でやってけるって思うな、あたし。

明来:俺の心はいつだって毎日がエブリデイ。

僕:毎日もエブリデイもおんなじ意味だよ。

あかり:ちょ


【BGM:ザァーン…(波の音)】


ナレ:しばらくおまちください。


あかり:ぜぇ、はぁ…

僕:な…なんか、ごめん…

明来:まったくお前って奴は。

僕:お前な。

あかり:あ…でもボクくん家ってお金持ちなんだよね〜。
    別に仕事しなくてもいいんじゃない?

僕:あ、うん…とくになりたいものとか、ないしね。

明来:○学生にしてニート宣言か。ツワモノめ。

僕:い、いや、何か仕事はするよ!?働くのはしてみたいし!

あかり:お父さんの仕事を継ぐとかは?お金持ちなら、何かの社長さんとかなんでしょ?

僕:え…あ、うん、その…僕、父上が何の仕事してるかとか、知らないかも。

あかり:何で知らないのよ。

僕:な、何でと言われても…

明来:きっとスーパーマンだな。

あかり:スーパーマン!?

僕:あんなアホな笑い方するスーパーマン絶対嫌だよ!

- 想像 -

【SE:ちゅどーん(爆発音)】

父:ヌァーッハッハッハッ!!!何処からでもかかってくるがいい、悪党ども!
  私は逃げも!隠れも!ついでに隠しもしない!!
  あ…各シモを隠しもしなギャーッハハハハハハぽぽぽひーんゲラゲラごぶごぶぱぎゃ


- 想像終了 -


僕:絶 対 嫌 だ!!

明来:そんな想像ができるあたり、お前もあの父の子だよな。

僕:うわああああ嫌だああああああ!!!

あかり:…っ!……っ!!

明来:あ、死者が。


- 僕家・メイド部屋 -


ナレ:玄関入ってすぐ右手。
   そこには有事(ゆうじ)の時のために作られた、
   玄関側に窓の付いた、受付係の小部屋が見える。
   監視カメラの映像を映すテレビや、館内放送機器などが並ぶ。
   通称『マセベヤ』。
   「いらっしゃいませ」のお部屋から由来している。
   さらにその奥、玄関とは扉を介して隔てられている、少し広めの部屋。
   長机とパイプ椅子が立ち並び、
   スクリーンやホワイトボード、そしてテレビと、なかなかの充実装備。
   メイドたちの休憩室 兼 会議室となっている。
   通称『メイドベヤ』。
   そこで、二人のメイドがお昼休みをとっていた。


地子:はふ〜。お茶がおいしいですぅ…。

篤宗:働いた後、昼飯と熱いお茶。なんだか…何か思い出してしまいそうだ。

地子:何か忘れたのです?兄様。

篤宗:いや…何だろう、とても重要な事のはずなのだが…

地子:そういえばちぃこも…何か忘れてるような…


ナレ:ロダン作、考える人。×2。


篤宗:…でもまあ、すぐに思い出す必要はなさそうな気もするな。

地子:…別にどうでもいい事のような気もするですね。

篤宗:ぬははははは…

地子:クスクスクス…


ナレ:二人して笑い、お茶をすすった。
   と、そこへ ノックの音。
   扉が開くと、隙間(すきま)から光が漏れた。


朝与:午前はおつかれさまね。


ナレ:もとい、優しさに輝く微笑みが のぞいた。


地子:メイド長!メイド長もおつかれさまですっ!

篤宗:全然疲れてなど!午後もゴシゴシ働くぞ、メイド長!

朝与:二人とも元気いっぱいねぇ。1時間弱であんなにたくさん磨けるなんて、すごいわ!

地子:えへへ…照れるですぅ…

篤宗:うむ、お褒めの言葉、ありがたい。この調子で頑張るとしよう!


ナレ:ほんわか。


朝与:期待してるわよ?終わったら、今日は新しい事をやってもらうわ。

篤宗:新しい事?

地子:新しいお仕事、教えてもらえるです?

朝与:ええ…みんなの笑顔を作る、大事なお仕事よ。


ナレ:そう言うとメイド長は、ぱちんとウィンクして見せた。


- 学校・教室 -


【SE:キーンコーンカーンコーン(チャイム音)】

明来:う〜っし、あと一時間!この一時間で俺はお前を越えるっ!!

僕:ム、できるもんならやってみろ!

明来:言ったなぁ〜?

僕:やるかぁ〜!?

ナレ:ほらほら、雛形(ひながた)もボクくんも席に着けー。ベル鳴ってるぞー。

僕:え、ちょ、なんで先生まで僕のことボクくんって言うんですか!!

ナレ:はい、教科書48ページ。開いて〜。

僕:スルー!?

ナレ:んじゃ雛形(ひながた)、3行目の「少年は〜」から読んでくれ。

明来:へーい。えっと、少年は書を開きながら、思考をめぐらせていた…


僕M:もしかして…先生まで僕の名前知らない?そんなバカな。
   出席簿だってあるんだし、ワザとに決まってる…


明来:視線は文を追っているように見えてその実、不安という名の海へと沈み始めていた。


僕M:そういえば…クラスメイトどころか父上すら…
   もうしばらく僕の名前、呼んでない気がする…。


明来:思い出せば思い出すほど、胸の中にモヤモヤは広がっていった。


ナレ:よし、そこまで。この場面で初めて、主人公の少年の不安が出てくる訳だ…。


【SE:カッ、カカッ..(チョークの音)】


ナレ:はい、んじゃ次、久嶺(ひさみね)。その続き読んでくれ。

あかり:はぁい。えーと…少年の不安は募り(つのり)、ついには…


僕M:もしかして…誰かが僕の名前をなくそうとしてる…?


あかり:…と、そんな事をも考えてしまう。


僕M:いや…理由が分からない。何の得がある?…でも。


あかり:偶然と言うには、タイミングが良すぎる。
    でも。しかし。だって。だけど。
    そんな問答(もんどう)を頭の中で繰り返す内に、


僕M:…これは、今考えても答えは出ないのかな…。


あかり:そう感じて、今は考えるのをやめた。


ナレ:よし、そこまで。では次のページを見なさい。


- 下校路 -


明来:終わった終わった〜!やっと一週間が終わった〜!

あかり:ね、ミセドでお茶して行かない?プニ・ザ・リングの新味が出たんだって!


ナレ:放課後。
   とは言えまだ陽も高く、3人の影は短く並んで闊歩(かっぽ)する。


明来:買い食いなんて不良のすることだな!ゲーセン行こうぜ!

僕:……。

明来:ツッコめよー!!!

あかり:アッハハハハハハッ!!

僕(棒読み):え?うん、なんでやね〜ん。

あかり:ぶふっ…ちょ、ボクくん、な、そんっ、棒読み…ぷくくくっ…!

明来(棒読み):ぐわー、やーらーれーたー。

あかり:ちょ


【SE:ピー…チチチ…(鳥のさえずり)】


ナレ:しばらくおまちください。


あかり:一年後に腹筋が8個に割れてたらアンタたちのせいだからね!?

明来:もう割れてるって。

あかり:まだ6個よ!

明来:……。

僕:……。

明来:ツッコめよー!!!

あかり:ぷっ…

僕:…ごめん。


ナレ:ふと、少年は顔をあげる。


僕:僕…今日はもう帰るね。

あかり:ええっ!?

明来:おう、またな!

あかり:えええっ!?


ナレ:あまりに こざっぱりした少年同士のやりとりに、あかりが困惑している間に、
   走り出した少年の背はあっという間に小さくなっていった。



- 次回予告 -

あかり:…え、ボクくんホントに行っちゃったし。
    明来(あくる)もアンタ、「おう、またな!」って。少しくらい引きとめなさいよ!

明来:引き止めたら負けかなと思っている!さぁ俺にツッコめ!ツッコんだら負けだぞ!

あかり:…え、ちょ、ツッコんだらいいの?駄目なの?えぇ!?

明来:このボケ殺しめ。あ…そういえば、アイツ明日…

朝与:次回、『メイド イン フランチェスカ!第五話【巨大マグロでスプラッタ!】』。

あかり:な、なんでやねーんっ!!

明来:ボツ。腰が入ってない、腰が。

あかり:え、ツッコミに腰がいるの?

明来:お、ナイスツッコミ。









@第3話へ戻る!

A第5話へ進む!

B台本倉庫へ行く!

C作者に物申す!(ツイッター)

D作者の部屋を物色する!