メイド イン フランチェスカ!

第三話【僕の名前を言ってみろ!】

僕♂
●学○年生の少年。環境柄、将来がちょっぴり心配な主人公。
メイドを多く抱える立派なお屋敷に住む富豪の息子。
家庭環境の所為か、専らツッコミ専門だが、天然ボケのきらいがある。
好物は、銘菓 紅葉亭の みたらしだんご

雛形 明来(ひながた あくる)♂
第一話では友達A。僕のクラスメイトの少年。
僕とは幼稚園時代からの腐れ縁で、僕との漫才的な会話を趣とし、専らボケ役。
人を馬鹿にした感が窺えるが、周囲への気配りを欠かさないトリックスター。
好物は冷凍みかん。愛媛産でないと決して首を縦に振らない。

久嶺 あかり(ひさみね あかり)♀
僕のクラスメイトで格闘技好きの快活な少女。
パンピーより低い位置にツボが存在しているのか、笑い上戸。
運動神経が良く、負けず嫌いな性格だが、にらめっこで勝てた事は皆無。
好物は妹の作るクッキー。

久嶺 ゆかり(ひさみね ゆかり)♀
あかりのひとつ年下の妹。おっとりした、か細い声の少女。
長い前髪と眼鏡で根暗な雰囲気があるが、素顔は割と普通の○学生。
本が好きで物知り。密かに僕に想いを寄せる。
好物はましゅまろ。

ナレ♂♀
解説兼カメラマン。何気に台詞の量が毎回主人公クラスだが今回はどうか。
ツッコミ成分が足りない時にそっと補ったげる優しさを併せ持つスペシャリスト。
好物はミセス・ドーナツの プニ・ザ・リング。


キャラクター設定資料


↓配役表↓/♂1 ♀2 不問2






ナレ:あらすじ!
   緻密(ちみつ)なキャリキュレーションの末に少年が創り上げた
   夢の理想郷は、いとも簡単に崩れ去ったさ!
   嗚呼そりゃあもう、クラムボンもヘンタイ親父もカプカプカプカプ笑ったさ!
   当家自慢のマッスルメイド、フランチェスカこと
   ムゲンダイ アツムネ氏はこう語る!

   飯か、風呂か、それとも俺か!

   茫然自失(ぼうぜんじしつ)の僕少年!
   微エロティックに腰をくねらせ、カモンベイベーなフランチェスカ!
   イライラマックスの攻撃は、5番ファースト・ボク君!
   ピッチャー第一球をシュートォ!ゴォォオオオオル!!
   甲子園の砂かき集め、涙を残して去るメイド!
   砂はすっかり消え去って、ナイターゲームに光り輝く星のグランドここにあり!
   違えた仲は、一夜のうちに元の鞘(さや)!
   かと思いきや、大雨の下マラソン大会、抱擁(ほうよう)めぐって三千里!
   生まれの兆し(きざし)の友情は、
   淡く!儚く!散り!消ゆる事!嗚呼!夢の如しぃぃいい!!

   意味が判らないという方は、コミックス1巻を読んでね!
   ないけど。
   …という訳で、翌日!


- 通学路 -

明来:そりゃあ災難だったな、微少年。

僕:たまには名前呼ぼうよ。あとその微少年そろそろヤメレ。

明来:あれ?えーっと…お前の名前、何てったっけ?

僕:オイコラ。

明来:そうそう、それだ!イヤ決して忘れてた訳じゃないんだぞ、オイコラ君。

僕:お前もう帰れ。




ゆかり(タイトルコール):『メイド イン フランチェスカ!
              第三話【僕の名前を言ってみろ!】』




ナレ:無二(むに)の親友と語らいながら通学路。
   朝陽に背を押されて、少年にとっての平和な日常が始まる。

明来:ウソウソ、メリケンジョーダン!知ってる知ってる!

僕:じゃー言ってみろよー。

明来:スネんなよー。任しとけって♪

僕:何をだ。

明来:ご町内の皆々様ぁ!ここにおわしますお方をどなたと心得るっ!!


【SE:ざわ…ざわ…ざわ…】


僕:待って!お願い!恥ずいから!後生(ごしょう)だから普通に言っ

明来:朝日ヶ丘町一番の富豪のご子息!

僕:聞けよ!

明来:幸の薄さも町一番!

僕:ほっとけ!!

明来:その名も!

僕:その名も!?


ナレ:早朝から世間の視線が痛かったが、やっと辿りついた名前公表。
   少年は固唾(かたず)をのんで彼の口を見守る事にした…が、次の瞬間!


あかり:ぅおーはよーぉさぁぁぁああああんっ!!!

僕:ひゃわぁああっ!?


【SE:キキキキキキ…(ブレーキ音)】


ナレ:砂煙を巻き上げて二人の間に飛び込んできた嘶き(いななき)。
   少年が驚いて尻餅。
   現れたその影は、くるんっと一回転して、天空をビシッと指差してポーズを取った。


あかり:いえいっ!久嶺(ひさみね)あかり、只・今・見・参!

明来:K.O! Parfect Win(パーフェクト ウィン)!


ナレ:少女のポニーテールが、祝福の風になびかれている。
   間違って扇子など持たせようものなら、危うく『日本一!』 とか のたまいそうだ。


僕:び、びっくりさせないでよ、久嶺(ひさみね)さん!
  朝からひかれて死ぬかと思ったよ…。

あかり:ニャハハッ!
    そーんなびっくりしなくてもいいじゃん、ボクくんったら女々しいな〜。
    ほら、見てみなよ。明来(あくる)なんて大したもんよ?

僕:そういえば…全然びっくりしてなかったような。


ナレ:あかりが指さした先。
   少年の親友、雛形 明来(ひながた あくる)が、
   『らうんど2』と書かれた板を掲げ、二人の周りを回っている。


僕:ら、ラウンドガールっ!?てゆか戦ってないから!ラウンド2ないからっ!!

明来:人生は常にコレ戦いである。

あかり:ぷふっ…!


ナレ:いかにも名言らしい世迷いごとを放ち、明来は眼鏡のフチをくいっとやった。
   あかりは笑っている。


僕:いや、明来(あくる)さん。キミ眼鏡してませんから。

明来:心眼。

僕:訳わからんわ。

あかり:ぶっ!アハハハッ、ハハハハハハッ!


ナレ:テンポ良くツッコミが入る。
   あかりは笑っている。


明来:ある程度のレベルになると、心眼という技が使えるように。

僕:レベルってアンタ。

明来:俺のような、人生の酸いも甘いも噛み分けたチョイワル紳士には、
   久嶺(ひさみね)あかり嬢たちの登場などといった少々のサプライズなど、
   スパイスにもなりやしないのさ。

僕:チョイワル紳士てアンタ。

明来:まぁ、ぶっちゃけ気付いてただけだが。

僕:気付いてたなら教えてよ!

あかり:ぷくくふっ…ひぃっ…!ちょ、ちょ、待って、笑い死ぬ…っ!

明来:おいおい、まぁ落ち着けよ。まぁ落ち着けよ。

僕:なんで2回言うか。

あかり:…っ!……っ!!


ナレ:あかりは腹を抱えて痙攣(けいれん)している。


僕:ひ、久嶺さん、だいじょ…って、ちょっ!泡ふいてるっ!?

明来:ボクくんったら激しいんだから。

僕:明来のせいだろが。久嶺さん、深呼吸〜!

あかり:ひっ、ひっ、ふぅ…

明来:もう少しだ!頑張れ!

僕:それ、深呼吸違うから。


ナレ:5分後。


あかり:か、軽く冥府(めいふ)を彷徨って(さまよって)きたわ…
    さすがあくるとボクくんの漫才、朝から一撃必殺の威力って感じね。

僕:漫才って…普通の会話なんだけどなぁ。

明来:いや。


ナレ:首を傾げる少年の肩に手を置いて、明来は真顔で否定の一声をあげた。


明来:俺らの会話はおそらく、第三者から見れば十中八九、漫才だろうな。

僕:えっ、そうなの!?

明来:ああ。そうだよな?

あかり:そうだよねぇ。

ゆかり:そう思います。


ナレ:驚いた少年以外の3人がそろって頷いた。


僕:そ、そうだったんだ…


ナレ:少年にとって朝一番の一大事だった。
   ずっとそれが日常会話だと思って疑わなかった、親友との語らい。
   それが実は漫才だったという事は、周知(しゅうち)の事実だったのだ。
   まさに周知の羞恥(しゅうち)プレイ。
   ………コホン、失礼。
   朝も早うから、明来はともかく、久嶺あかり&ゆかり両名に、
   己の常識のなさを露呈(ろてい)する事になろうとは。
   と、そんなグルグル回る思考の中に、一筋の違和感。


僕:…って、うぇあ!!?

ゆかり:え…?


ナレ:某国語で服を意味する奇声をあげながら、少年が振り向いた先には、
   小柄でやや影の薄い少女が首をかしげていた。


僕:ゆ、ゆかりちゃん…いつからそこに?

ゆかり:え、ええっと…結構前から。おはようございます、ボクくん先輩。

僕:あ、お、おはようございます…


ナレ:へこへこ。


あかり:くふふっ…なんであたしたちにタメ語で後輩に敬語なのよ、ボクくん?

明来:まったく失礼な微少年め。

僕:いや、その…全然気付かなかった…

明来:ニブチンめ。

ゆかり:あ、あのっ…すみません、おどかしちゃったみたいで…


ナレ:しょんぼり少女。
   慌ててフォローをするべきだという選択肢(せんたくし)が選ばれた。
   ピッ。


僕:い、いや、僕の方が悪いし、うん…

明来:うむ、まったくだ!
   ボクくん先輩は、後輩はもとより、お国をもっと大事にしてやるべきだ!
   戦争万歳!ウォー!!

僕:いや、今お国も戦争も関係ないから!適当言ってるだろお前!

あかり:ぶっ!ぷははははははっ!

ゆかり:クスッ…クスクス…


ナレ:ツッコミしつつも、垣間(かいま)見えたゆかり嬢の笑顔に、少年は少しホッとした。
   ふと明来氏の方を見ると…


明来:ふひひ。


ナレ:ニヤッと悪戯(いたずら)っぽい笑みを浮かべて、ウィンクなどして見せた。


僕M:…まったく。これだから明来とはずっと友達でいたい。

僕:っていうか、なんで明来まで僕の事ボクくん先輩って言うんだよっ!

明来:え、お前の名前ってアレだろう?『朴訓(ボク クン)』って言うんだよな?

僕:僕ナニ人だよ!!ねぇ、久嶺さんは知ってるよね?クラスメイトだしっ!

あかり:くふっ…ぷぷぷぷ…え、何?

僕:いや、笑いこらえてないでさ。僕の名前、知ってるよねって。

あかり:…………。

僕:…え、何その真顔。

あかり:…ごめん、ボクくん。

僕:嘘ォー!!?


ナレ:明来氏のは冗談だとしても、
   クラスメイトに真顔で『名前知らない宣言』されるのは大ダメージである。


僕M:残るは…


ナレ:チラリ。ゆかり嬢へと…


ゆかり:……ボクくん先輩。

僕:ギャー!


ナレ:無垢(むく)な、そして若干の申し訳なさを含んだ微笑みの前に、
   少年は膝をつき両手を地についた。


明来:K.O!

僕:なんの、負けるかぁあっ!

明来:おおっと、ボクくん先輩が立ち上がり、仲間になりたそうにコチラを見ている!

あかり:がんばれボクくん!

ゆかり:先輩、ファイトですっ!

明来:らうんど3!

僕:よしっ…!


ナレ:他人事な応援団およそ3名の前に、少年は仁王立ちした。


僕:ちゃんと聴いてよ?憶えてよ!?

ゆかり:はっ、はいっ!


ナレ:ゆかり嬢がコクコクと頭を振る。


あかり:O.K!


ナレ:あかり嬢が親指を立てる。


明来:K.O!ぱーふぇく…

僕:ちぇいっ。

明来:ムギャー!


ナレ:親指下げてたファックなガイにはローキックの制裁(せいさい)が下った。


僕:スゥ…ハァー…。


ナレ:目を閉じ、一呼吸。
   いける。
   言える。
   第3話にしてやっと、主人公としての名前を知らしめる事ができる。
   カッ!
   目を見開き、胸に手をグッと握り締め、今一度大きく息を吸い込んだ。


僕:僕 の 名 前 は!


ナレ:朝日ヶ丘の朝へ!
   いざ響け(ひびけ)、少年の名よ!
   もうボクくんなんて言わせない!
   少年の名乗りを妨げる事など!!


【SE:キーン コーン カーン コーン(学校のチャイム音)】


ナレ:学校の予鈴(よれい)にしか出来ないのだっ!!!



- 次回予告 -

僕:もうやだ…

明来:オイオイ、廊下でマジ泣きすんなよ。バケツが重くなるぞ。

僕:結局間に合わなかったし…。

あかり:先生も今時、廊下でバケツてまた古風(こふう)だよねぇ…。

僕:あ、ちなみに久嶺さん、僕の名前なんだけど、

ゆかり:次回、『メイド イン フランチェスカ!
        第四話【ナイスガイとストロベリーレディ】』 。

僕:って言うんだ。憶えといてよ?

あかり:オッケー!ちゃんと憶えとくよ、ボクくん♪

僕:あ、あの…









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D作者の部屋を物色する!