メイド イン フランチェスカ!

第二話【ヨトギの手法はしっかりと】

僕♂
●学○年生の少年。環境柄、将来がちょっぴり心配な主人公。
メイドを多く抱える立派なお屋敷に住む富豪の息子。
もともと大人しい、ごく普通の少年のはずだったんですけどね…w

篤宗♂
本名、無限台篤宗(むげんだい あつむね)。前話では『男』。
デカくてマッチョで重低音で、とにかく暑苦しい。
源氏名はフランチェスカ。
他、詳細は作中で。

父♂
僕の実父。センスの悪さと高笑いの狂いっぷりは唯一無二(自称)。
下ネタも紳士的にこなすが、中々周囲の理解を得られず、今夜も枕を湿らせる。

ナレ♂♀
解説兼カメラマン。何気に台詞の量が主人公クラス。
最近のマイブームはジャックのぬいぐるみ収集。
解説という仕事に拘りがあるらしく、その所為で損をする事もあるらしい。


キャラクター設定資料


↓配役表↓/♂2 不問2






- 僕の部屋 -

篤宗:よく帰ったな、兄者。

僕:………。

篤宗:飯か?風呂か?それとも……俺か?



父(タイトルコール):『メイド イン フランチェスカ!
            第二話【ヨトギの手法はしっかりと】』


ナレ:今日こそはと思い描いた、些細(ささい)なひと時。
   垂れた糸の先に見た理想のユートピア。
   完成間近のボトルシップが、巨大化した悪の宇宙人と戦う××レンジャーの
   デラックス×××ロボの小指に踏み潰されて、砂に還っていったよ。
   クラムボンはかぷかぷ笑ったよ。
   クラムボンは死んだよ。
   あははははは。
   あははははは。
   あははははは。
   あははh


僕:aはは。あははははは。あははははは。
  ………あの…無限台(むげんだい)さん、何ゆえ僕の部屋に?

篤宗:うむ、兄者にそこまで喜んでもらえるとは、これ光栄の至り!
   で、飯か?風呂か?それとも…

僕:喜んでません。全然喜んでません。てゆか質問に答えろや。

篤宗:まあまあ兄者、気持ちは判るがそう照れるな。で、飯か?風呂か?それとも…

僕:照れてないって!ってゆか何を判ってるんです!?ねぇ!?
  あ、あと『それとも』はそろそろもういいです。

篤宗:そんなに興奮して…

僕:誰のせいで!!

篤宗:…ハッ、まさか!?

僕:うっ…て、なに頬赤らめてんですか?なに『か弱さ』を演出してんですか!?

篤宗:俺か?

僕:違うわぁぁあああっ!!!

篤宗:心配は無用、こういう時の為、ヨトギの手法はしっかりと心得ているぞ。

僕:…ハァ。あ、あの…無限台さん…?


ナレ:脆弱(ぜいじゃく)に肩で息をする少年の前で、
   たくましい腰を嫌に妖艶(ようえん)にくねらせるこの男。
   特徴を列挙(れっきょ)しよう!
   全長2メートル。
   肩幅1メートル半ほど。
   体重100キロオーバー(主に筋肉)。
   ギンと端の吊り上がった野太い眉。
   熱血体育教師系の濃い瞳。
   部屋をビリビリと震わす重低音を放つ広い口。
   えらの張りが勇ましいごつい輪郭。
   美しく柔らかく揺蕩う(たゆたう)漆黒の髪。
   可愛らしいフリル付き、モノクロ基調のメイド服。
   以上!
   …とてもこの世の者とは思えない。


僕M:父上、嗚呼父上…貴方はどうしてこんな人を…

篤宗:そんな無限台(むげんだい)さんなどと、恥ずかしい名で呼んでくれるな兄者!
   俺には…『フランチェスカ』という立派な名があるのだから!!

僕(小声で):…どうしてこんな人をメイドとして雇ったんですか、父上…。

篤宗:ん、何か言ったか、兄者?

僕:フランチェスカの方が恥ずかしい名前だと思いますよ、無限台さん。

篤宗:そ…そうだろうか…兄者の父君は『とてもいい名前だ』と言っていたのだが…

僕:父上… orz


ナレ:父が世に言う『馬鹿と天才は紙一重』を体現(たいげん)する存在である事を、
   改めて思い知る少年であった。


篤宗:さて、では僭越(せんえつ)ながら、さっそくヨトギの準備を…

僕:しなくていい!脱がなくていい!!
  まだ夕方だし、それ以前に僕まだ○学生だし、ってゆかそうじゃなくて、
  大体無限台さん今日は買い物班じゃなかったんですかっ!?

篤宗:シフトなど、愛の力で何とかなるものだ。

僕:なるの!?

篤宗:いや、実は今朝、俺が朝食の片付けをしていると、兄者の父君が…



- 回想 -



父:いやぁフランチェスカ君。
  君はいつも我が家のメイドとして実に懸命(けんめい)に働いてくれているね。
  しかぁし!君もたまにはユクーリ体を休めるべきだと私は思うのだYo。
  よって今日一日、君は余暇(よか)を楽しむが良い!
  …これは主人としての命令だ。メイドへの命令。即ち(すなわち)ド命令だ!
  ド命令……ふふっ、ふはっ、はははは、ハーッハッハッハッハッハッハッ!!
  アハッ、ヒ、ムフフフフフ、へひゃひゃひゃひゃひゃ!



- 回想終了 -



篤宗:という事で、俺は一日余暇(よか)をもらう事になったのだ。


ナレ:仁王立ちで濃い笑みを浮かべ、さも誇らしげに言う。
   日も暮れたというのに後光(ごこう)すら射しているように思えた。


僕:うわ父上、何て余計な事を…しかもド命令て訳判らんし。

篤宗:しかしながら、一日の余暇を貰ったところで何をしたものかと…
   そう考えた結果、俺の大好きな兄者の為に、
   兄者のお部屋を掃除しようという結論に達したのだ。

僕:何でそう…


ナレ:どうだ!と言わんばかりに胸を張るフランチェスカに、
   即座にツッコミを入れようとする少年。
   が、しかし。


【SE:パァンッ!(何かが弾ける音)】

僕:ってうわぁぁああああ!!?


ナレ:弾けたのはなんと、フランチェスカのメイド服、その胸元だった!
   繊細(せんさい)な給仕服(きゅうじふく)の生地(きじ)の
   伸縮率(しんしゅくりつ)パーセンテージが
   胸を反った彼の躍動(やくどう)する肌の圧迫に耐えられなかったようだ!

   たくましい胸筋(きょうきん)が外気(がいき)に晒されて
   ヒクヒクと脈動(みゃくどう)している!

   …こんな説明仕事でもしたくないよ…シクシク。


篤宗:ハッ、いやんっ!

僕:いやん!?いや可愛くないから!!むしろあまり隠す必要ないから!!

篤宗:そんなに興奮して…ハッ、まさか!……俺か?


ナレ:くねり。


僕:違っ、だっ、あぁぁああもうっ!出てってくださいっ!
  部屋の掃除も自分で出来ますからっ!!


ナレ:イライラ フルゲージ!
   少年のターン!
   少年のこうげき、『つきとばす』!


【SE:バイーン(跳ねる音)】


僕:ってうへぁわぁああっ!?


ナレ:が、しかし、鋼のような筋肉の鎧の前に、
   ひ弱な少年の体はたやすく弾き飛ばされてしまった。


僕:う…痛たた…

篤宗:大丈夫か、兄者…。

僕:あ……


ナレ:尻餅な少年の目の前。
   大きな手がそっと差し伸べられた。
   少年は暫く(しばらく)ボーッとその手を見つめていたが、ハッと我に帰ると、


僕:…だ、大丈夫です…さっさと出てってください…。


ナレ:その手を取らずに、そっぽを向いて一人で立ち上がった。


篤宗:その…兄者、すまなかった。二度と兄者の部屋には立ち入らない…。

僕:当然です。


ナレ:即答。
   それは、二人にそれ以上の会話を許さなかった。


篤宗:……失礼した。


ナレ:窓の外へ視線を投げた少年の背中に、巨体がペコリとおじぎをして、
   ドスドスと重い足音が遠ざかっていった。
   少年の目に、窓を反射して一瞬見えた、フランチェスカの濃ゆい顔。
   その目尻に。


僕:あ…!

【SE:バターン(扉の閉まる音)】


ナレ:大きな雫。
   ハッとして少年が振り返った時には、扉の閉まる音が部屋に響いた。


僕:……ハァ、泣きたいのはこっちだよ…。
  でも、これでやっとゆっくりできるかな。


ナレ:壁に掛かった丸い時計へと目を送る。


僕:18時ちょっと過ぎ。夕飯までは1時間半、か……ん?


ナレ:月の光がそっと射し始める頃。
   少年は、あることに気が付いた。


僕:こ、これは…?


ナレ:視線を部屋中にめぐらせた。
   大理石の床。
   大きな窓のふち。
   勉強用机。
   本棚の隙間。
   平面テレヴィのディスプレイ。
   シャンデリアの装飾のひとつひとつ。
   壁。
   天井。
   そして、時計のカバーガラス。
   すべてがそれはもう、射し込む月の光を余す所なく受け止め、きらめいていた。


僕:はぁぁ…。


ナレ:きれいだ。
   その言葉を思い出すのも忘れて、少年は自然のプラネタリウムの虜になった。


僕:………。



篤宗M:俺の大好きな兄者の為に、
    兄者のお部屋を掃除しようという結論に達したのだ。


僕:………。


僕M:出てってくださいっ!部屋の掃除も自分で出来ますからっ!!

篤宗M:…兄者、すまなかった。


僕:………。


ナレ:少年はシャンデリアを見上げた。
   天井の真ん中で万華鏡(まんげきょう)を思わせるそれは、ジャンプしたって椅子に乗ったって、到底(とうてい)少年の手は届きそうになかった。


僕:……ハァ。


ナレ:少年は小さなため息とともにベッドに横になった。
   だが、ため息とは裏腹に、胸のイライラは不思議と星空に消えていた。


僕:……ふふっ…。


ナレ:何だかおかしくなって、暫くは天井を見つめながらクスクス笑っていた。



- 食事の間 -

僕:ごちそうさまでした。

父:おや…食うのが早いな、息子よ。
  きちんと噛んで食べないと、大きくなれないぞ。体も、人間もな?
  無論、息子も……ぶふっ、ふはっ、ははははは、ハーッハッハッハッハッハッ!!
  アハッ、ヒ、ムフフフフフ、へひゃひゃひゃひゃひゃ!

僕:んじゃ、僕宿題やるから。おやすみなさいっ!

父:もひょ、もひょっ、うくくくくっ!アヒャアヒャアヒャ……アレ?息子は…?
  ヘイ息子!マイサン!カモンマイサン!
  …っと、こちらでは夜でも、あちらではデイタイムかもしれないな。
  この辺にしておこう。


ナレ:なんで?


父:ハーッハッハッハッハッハッ!!ギャハッ、ぶ、ぶほっ!
  アヒ、アヒャ、モホモホモホモホ…


ナレ:聞いちゃいねぇ。


- 廊下 -

篤宗:む…

僕:あっ…


ナレ:二人は廊下で対峙(たいじ)した。


篤宗:……失礼する。


ナレ:刹那(せつな)の物憂げ(ものうげ)な表情。
   しかし、すぐにいつもの濃い笑顔を作ると、
   フランチェスカは少年とすれ違いドスドス歩いてゆく。


僕:待ってくださいよ。


ナレ:ピタリ。
   大根3本分はあろうかというくらいの図太い足が、たった一言で静止した。


篤宗:…何だ、兄者。

僕:…僕の部屋は、その…普段から僕が、自分で掃除してるんです。

篤宗:……。


ナレ:振り返らないまま、少ししょんぼりする大きな背中。
   その背中に、少年は言葉を続ける。


僕:でも…どうしても届かない所があって…そこはひとりで掃除が出来ないんです。
  だから…その…

篤宗:兄者…。

僕:だから…


ナレ:言葉がうまくまとまらない。
   考えたのち、少年は結局、一番伝えたかった言葉をそのまま口にした。


僕:ありがとう、ございます…。

篤宗:兄者…っ!

僕:あ、あと…あんなひどいこと言って、あんな言い方しちゃって…
  ごめんなさい。……フランチェスカ…さん。


ナレ:今度は少年が、彼の大きな背中に、深く頭を垂れたのだった。
   すると…


【SE:ポツ、ポツ…ザァー(雨が降り出す音)】

僕:…あ、雨…?


ナレ:窓の外を見るも、真っ暗ながら快晴。
   なのに、音はどんどん勢いをあげていく。
   おそるおそる頭を上げると、そこには…


篤宗:兄者…あにっ、兄者ぁぁああっ!!!

僕:うわっひぃ!?


ナレ:まさしく滝のような涙を流しながら、
   ごん太い両手を広げて走り寄る巨大メイドの姿があった。


篤宗:良いのだ!良いのだ!兄者は何も悪くないのだ!!

僕:ひぃぃっ!!あわわ、わわわわ、落ち着いて!
  落ち着いてください、えっと…フランチェスカさんっ!


ナレ:あまりの勢いに…というよりも恐ろしさに、本能が少年の体を逃走させた。


篤宗:フランチェスカ『さん』!フランチェスカ『さん』などと!
   呼び捨ててもらって構わないぞ兄者ぁぁああ!!

僕:分かりましたから落ち着いてぇぇええええ!!

篤宗:兄者ぁぁああ!兄者ぁぁぁあああっ!!

僕:こ、来ないでぇええぇえっ!!


ナレ:ごつい見た目にガラスのハート。
   コレぞ、当家自慢(?)のマッスルメイド、フランチェスカその人である!



- 次回予告 -
僕:もうっ…ハッ…予告が…ハァッ…始まって、るん、ですっ、てば…ヒッ…

篤宗:兄者ぁ…ゼェ、ハァ、待つのだ兄者ぁ、仲直りの抱擁(ほうよう)を…ゼェ…

僕:力の、ハァ、限り、ヒィ、遠慮、させてください…ハヒィ…

父:仲良き事は素晴らしきかな…あ、今宵の虎徹(こてつ)は血に飢えておるぞ!
  ……ばふー!ゲラゲラゲラ、ウシャシャシャシャ、ハヒャハハハハハ…

僕:ち、父上のアホぉぉおっ!!

僕:次回、『メイド イン フランチェスカ! 第三話【僕の名前を言ってみろ!】』 。

父:アホだと!アホなのも今のうちだ!そのうち…ガーッハッハッハッハッハッハッ!
  アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!

ナレM:そのうちアホ以上のものにでもなる気だ、この人は。









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A第3話へ進む!

B台本倉庫へ行く!

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D作者の部屋を物色する!