メイド イン フランチェスカ!

第一話【飯か?風呂か?それとも…?】

僕♂
●学○年生の少年。思考力に長けたこの物語の主人公。
メイドを多く抱える立派なお屋敷に住む富豪の息子。
環境の所為か、専らツッコミ専門だが、天然ボケのきらいがある。

友達A♂
僕の同級生の少年。僕とは幼稚園時代からの長い縁がある。
僕との漫才的な会話を趣とし、専らボケ役。
スタンダードで人を馬鹿にした感が窺えるが、その実周囲への気配りは忘れない。

ボブ♀
僕の家の裏庭で飼っている大きなまも…いや、犬。恐らく雑種。
勝手口からの侵入者から家を護って早十年余。
僕の良き理解者。
メスなのにやけに雄々しい台詞は僕にしか聞こえない仕様。

父♂
僕の実父。センスの悪さと高笑いの狂いっぷりは天下無双を誇る。
忍者モノの映画が大好きで、職業は『世界の平和を守る仕事』らしい。
常に前向きで、多少の苦難はものともしない。
いつも息子に無視られようと、毎夜の枕を濡らす程度で乗り越える。

男♂
詳細は次話。とりあえず渋くて変な方。台詞は少なめ。

ナレ♂♀
解説兼カメラマン。何気に台詞の量が主人公クラス。
ツッコミ成分が足りない時にそっと補ったげる優しさを併せ持つスペシャリスト。


キャラクター設定資料


↓配役表↓/♂3 ♀1 不問2






- 自販機前 -

友達A:いやー!この瞬間のために生きてるなー!

僕:風呂上がりの一杯みたいな事を…一気飲みは体によくないよ?

友達A:ファ○タ。

僕:Σ炭酸!?

友達A:これを『ブレイブ(勇気)』と言う。

僕:無謀なだけだよ!

友達A:ブレイブとグレープ味を掛けてみた。

僕:うまいこと言ったつもりか!


ナレ:清々しく煌(きらめ)く蒼い空の下。下校という名の散歩道を、二つの頭が並び行く。


友達A:あ、そういやーさ、今週のモガジンもう見た?新連載ビミョ〜だったけど。

僕:そうかなぁ〜?あれ流行るタイプだって。そのうちアニメになるって。

友達A:あげくのはてに連載に追いついちゃってアニメが先に終わったり、
    オリジナルストーリーになったりすんのな。

僕:生々しっ!

友達A:この話もいつかはそうなるんだ、諸君。


ナレ:あ、こら、こっち見んな。


僕:何で選挙ポスターに向かって話しかけるか。てゆーか、諸君って誰よ。

友達A:ふっ…悲しいかな。
    絵本の中の少年は己が人生を読まれるべくして生きている事を知らぬのだ…あはれ。

僕:いや、何を言いたいのかさっぱり分からんし。

友達A:分かったらえらいこっちゃ。

僕:…???


ナレ:その少年が、友人とただただ馬鹿げた話をして時間を潰すのには、
   中々に情けない理由がある。
   会話の楽しさに少年がその理由を忘れかけた頃、
   赤い太陽が山に喰らいついた。


僕:あ…、そろそろ時間だ。

友達A:お、そっか。気ぃつけてな。…何つーか、お前も金持ちなのに幸薄いよな。

僕:ああああ!幸薄いとか言うなよ!もっとぶ厚くなれって祈れこの野郎っ!!

友達A:シアワセってのは自らの手で掴むもんだぜ!(キュピ〜ン)

僕:もっともな事言ってて何かムカツク!!

友達A:何だとやるかっ!この薄幸の微少年!天然 総受けM男!ホモ!

僕:………。

友達A:…い、言い過ぎたからって謝んないんだからねっ!

僕:謝れや。

友達A:あまりの申し訳なさにもう頭が下がりません。

僕:いや、申し訳なかったら下がろうよ!誠意のかけらもないよ!!


ナレ:ボケとツッコミは、少年たちの挨拶みたいなもの。
   それは別れを惜しむ儀式でもあった。
   二人は笑み合い、握りこぶしをコツンと軽く合わせた。


僕:じゃあ、また明日ね。

友達A:おう、武運を祈ってる。

僕:不吉が起こりそうな言い方しないでよ。

友達A:ハハッ。んじゃな!

僕:バイバイ!


ナレ:赤い景色の中で、二つの長い影が離れていった。
   少年は振った手を止め、そっと降ろして呟いた。


僕:さて…アレが帰ってくる前に、部屋に辿り着かないと。



男(タイトルコール):『メイド イン フランチェスカ!
            第一話【飯か?風呂か?それとも…?】』



ナレ:大きな白屋根の屋敷を囲う、約2キロメートル平方の高い塀。
   監視カメラの網が張り巡らされ、正面玄関には警備員。
   そんな大屋敷の中で、ただひとつ。
   監視カメラも警備員も配置されていない場所で、少年は歩みを止めた。


僕:買い物班はそろそろ出る頃だ…。


ナレ:裏口。勝手口とも言う。
   ここに監視カメラも警備員も必要がない理由は簡単だった。
   少年は左右上下を確認した。


僕:よし…誰もいない。予定通りだ。


ナレ:少年は呟くと、裏口の扉へ一歩踏み出した。途端。


ボブ:……。


ナレ:常人ですら感じ取れるであろう、殺気の壁が現れる。


僕:僕だよ、ボブ。入るよ。

ボブ:……何だ、坊か。


ナレ:壁はスッと消える。
   扉を開けて、少年は自分の土地に踏み込んだ。
   ボブ。
   雑種。
   メス。
   十数年もの間、鼓膜を破るホーンを誇る咆哮(ほうこう)と、
   骨を斬り裂き、鉄をも噛み砕く歯と爪で、裏口からの侵入者をことごとく退けた、
   あらゆる意味で大きな犬である。


僕:ただいま、ボブ。


ナレ:ボブは伏せたまま一瞥(いちべつ)をくれただけで、ため息と共にまたヨソを向いた。


ボブ:ハァ…一家のご子息が裏口から侵入とは…情けないものだな。
   だが、事情は予想がつく…気をつけてな、坊。

僕:さんきゅっ。

ボブ:ああ。


ナレ:犬との会話が成り立っているような気がするのは気のせいだ。
   少年はその辺に散らばっている肉片や頭蓋骨を特に気にかける事もなく、
   庭を進んでいった。


僕:さぁ、勝負はここからだ…。


ナレ:屋敷の外壁に背を当て、少年は時計に視線を落とした。


僕M:17時10分…今朝のシフトではアレは買い物班。大丈夫だと思いたい…。

ナレ:屋敷のメイドたちはこの時間、
   買い物班、掃除班、巡回班に別れ、夕食までの時間を過ごすのだ。
   窓からそっと中の様子を窺うと、ちょうど巡回班のメイドが廊下を横切って行った。


僕M:アレじゃない…。


ナレ:メイドの背が廊下の奥へと消えた。


僕M:巡回班の巡回ルートは決まってる。あと3分は来ないはず…
   よしっ、作戦開始(ミッションスタート)ッ!!


ナレ:少年は、かかとで壁をトンと叩いた。
   すると、壁が音もなく回転し、少年を館の中へと招き入れた。
   回転壁(かいてんへき)。


僕M:…洋風のお屋敷にはあまり似つかわしくないけど、役には立つんだよね、これ。



- 回想 -

【SE:くるり バタン くるり バタン】

父:どぉーだ息子よ!おもしろいだろう、かっこいいだろう、漢のラ・マンだろう!!

僕:なんか違う気がする…

父:いやーハッハッハッ、そうだろう、そうだろう!
  それでこそ私が自身の手で創り上げたかいもあるってものだナァーッハッハッハッ!!

僕:聞いちゃいねぇ。

父:ナハッ、ナハハ、ハ、だがしかぁぁあああしっ!!!

僕:うわひぃっ!?

父:よいか息子よ。
  この回転壁の存在は、代々我らの血族にのみその存在を伝承されねばならないのだ。

僕:代々?これって父上が作ったんじゃ…

父:この回転壁の存在は、代々我らの血族にのみその存在を伝承されねばならないのだ!!

僕:あーもー分かった分かった…

父:したがって、他の者には決して教えてはならんぞ息子よ。
  友達でも給仕でも駄目だぞ息子よ。息子よ。

僕:はいはい。息子息子て言いすぎですから。

父:おお、これは私としたことが!デイタイムから連発する言葉ではなかったな!!

僕:なんで?

父:ハーッハッハッハッハッ!
  ブヒャヒャヒャ、グフッ、ムハハハハハハハ!!
  ウホッヒュ、ボボボボボボ!!

僕:聞いちゃいねぇ。


- 回想終了 -



僕:…今になってこんなに重宝するなんて。ありがとう、父上…あなたのことは忘れない。

ボブ:まだ生きてるがな。


ナレ:窓の外から人外のツッコミが優しく届いた。


僕M:さて…階段の手前には厨房か。


ナレ:少年の行く手には長い廊下。
   目指すは自室。
   二階にある。
   左手側にある厨房の扉には窓がついており、廊下との視野を繋いでいる。
   少年はその窓の視野に入らぬように、前かがみで前進した。


僕M:万が一シフトが変更されて、アレが厨房の掃除係をしているとも限らないしね…
   ふふ、我ながら抜かりなしっ。


ナレ:自画自賛の声を胸に響かせ、少年は階段に到着。


僕M:…よし、階段に人の気配もない。


ナレ:自室は階段を上がって西側、長い廊下の途中に扉がある。
   少年は口の端を歪めてほくそ笑んだ。


僕M:ふふふ…チェックメイト。僕の勝ちだ…!


ナレ:ラストスパート。少年は扉まで一気に駆け抜けた。
   開けて閉めるまでに1秒。
   鍵をするのに0.2秒。
   出迎えるは理想郷、孤高のマイルーム。


僕:ただいま僕の部屋!
  父上が帰ってくるまで僕をかくまってくれる、素敵で無敵なマイルームっ!!

男:よく帰ったな、兄者。


ナレ:勝利の声が、低く野太い声の中に溶ける。


僕:………。

男:飯か?風呂か?それとも……俺か?


ナレ:作戦失敗(ミッション フェイルド)。



- 次回予告 -

僕:うわぁん桃源郷なんて何処にもなかったんだよボブぅー!!

ボブ:ぼ、坊…苦しいぞ。

父:ええい女々しいぞ息子よ!
  だがそれがいい。…ブッ!フハハハハ、ハーッハッハッハッ!
  ムヒヒヒヒ、もふん、えふぉほはふひゃひゃ…

男:兄者は俺の事を…嫌いなのだろうか。

男:次回、『メイド イン フランチェスカ! 第二話【ヨトギの手法はしっかりと】』 。

友達A:やっぱ幸薄いよ、お前。クククッ…

僕:うるさいよ!!









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