メイド イン フランチェスカ!

第十話【私と二人じゃ駄目ですか?】

僕♂
この物語の主人公だが影が薄い少年。でも別に陰キャというわけではない。
お金持ちの家に生まれ、それゆえの不運に見舞われながらすくすく育つ。
ツッコミ担当。明来と一緒にいさせると、いつまでも漫才をしている。
今回は軽いアドリブがあるので好きな本について語る準備をしておくと良い。

雛形 明来(ひながた あくる)♂
僕とは幼稚園からの腐れ縁である同級生の少年。ムードメーカーでニヒル。
笑い上戸のあかりが笑いすぎて死に掛ける時の反応が面白くてボケが止まらない。
社交性は割とあり、読むべき空気は読めるが、読む必要がなければフリーダム。

久嶺 あかり(ひさみね あかり)♀
僕のクラスメートの快活な少女。重度の笑い上戸でよく笑いすぎて気絶する。
身体能力が非常に高く、パッと見では分からないが服の下はけっこう筋肉。
最近の趣味はパルクール。壁蹴りからの側面宙返りがお気に入り。

久嶺 ゆかり(ひさみね ゆかり)♀
アウトドアなあかりとは対照的なインドア派の妹。本の虫。
僕以上に気配が薄いことが多く、話しかけても気付いてもらえないことも。
引っ込み思案な自分を引っ張ってくれる姉のことを割と尊敬している。

ナレ♂♀
ナレーション。当物語においてナレーションはナレーションでないこともある。
何を言っているか分からないと思うが、私も何を言っているのか分からない。
最近メタ発言の多いキャラクターたちに頭を抱えている。


キャラクター設定資料


↓配役表↓/♂1 ♀2 不問2






明来:さて…今回から新展開だから過去話の宣伝以上の意味も持たず
   ドーナツの穴並みに必要性が危ぶまれる前回までのあらすじ聞く?

ナレ:おいやめろぉー!そういうこと言うのやめろぉー!


- バス 車内 -


【SE:ぶろろーん(バスのエンジン音)】

ナレ:えー、本日もー、天上(あまがみ)交通バスをご利用頂くお客様
   の中に、ひと際そわそわ落ち着かない少年がいる。
   その表情は、近い未来のイベントに対する期待と希望に溢れており、
   そのマイナスイオンが車内を埋め尽くしている
   かのような錯覚に陥ってしまったあなたは、次の目的地のアナウンスで我に返り、
   お手元のボタンでお知らせくださいませ。
   次はー、石通り。石通りです。

僕:……あっ、降ります!降りまーす!

【SE:ピンポーン】

ナレ:連休初日のグッドなモーニング。
   透き通る空色の空の下、透き通りそうに影の薄い地味な少年を降ろしてバスが発つ。

僕:よーし…今日はいっはい遊ぶぞーう!

ナレ:少年は意気揚々と歩き出す。
   そのハートは、万華鏡のような石の畳に導かれ、
   何度も巡り合ったその場所は、ぴゅわーな子供の夢の国…そう、遊園地である!!


あかり(タイトルコール):『メイド イン フランチェスカ!
              第十話【私と二人じゃ駄目ですか?】』


- 噴水広場 -


ナレ:まだ人もまばらな朝の公園
   待ち合わせの噴水が、少年を歓迎するかのように、高く激しく噴き上げる。

僕:8時半…うーん、さすがに早すぎたかな。
  …まぁ、待たせるよりはいいよね?

ナレ:実に定刻の2時間前に到着した少年!浮かれすぎだぞ少年!!
   嗚呼、青いベンチに腰掛け、駅で待つはずない君を探すこともなく、
   待ち時間を満喫するための本を取り出した!

僕:〜♪

ナレ:…えー、少年は本を読んでいる。

僕:〜♪〜♪♪

ナレ:…鼻唄を歌いながら、少年は本を読んでおります。

僕:………。

ナレ:あっ、没頭し始めた!
   …えー、このまま少年の状況をお伝えしても、あまりにも面白味に欠けるんで、
   そうですね…遊園地に行くことになったいきさつを振り返ってみましょうか!
   それは、ひとりの少女が小さな勇気を絞り出した、3日前の昼下がりのことだった。


【SE:ほわわわ〜ん(回想に入る音)】


- 3日前 昼休み 学校の屋上 -


僕M:フランチェスカさんのお師匠さんという嵐が訪れ、過ぎ去ってから早十日。
   我が家のマッスルメイド男子・フランチェスカさんは、あの日を境にいつでも僕にべったりだ。
   家に帰れば「おかえりアニジャー!」
   お風呂に入っても「お背中アニジャー!!」
   寝るときも「添い寝アニジャー!!!」
   …といった感じで、もうホントとにかく暑苦しくて、心の休まる時間がないわけで。
   ていうか、お背中アニジャって何なんだと。

あかり:アッハッハッハッ!愛されてるねぇ〜。

僕:これからずっとこんな調子じゃ困るよ!

明来:いいぞ、その調子だ。

僕:その調子でたまるか!

明来:たまらないのかね。

僕:たまったもんじゃないよ!

明来:ヒュウ、たまんねぇな。

あかり:アハッ…ヒッ…ヒッ……

ゆかり:あっ、あの…お姉ちゃんのお腹が天に召されそうなので、その辺で…


【SE:ファー(天に召される音)】

ナレ:5分後。


あかり(笑いをこらえつつ):くふっ…たまったもんじゃ、ないですって…?こっちのセリフだわ…

明来:照れるぜ。

僕:照れるな。

あかり(笑いをこらえつつ):ぐっ、ふ…真昼間から最前列プレミアムシートで…
              おしどり漫才をッフ…見せつけられる方の身にもなって…ヒッ……

明来:笑いながら凄まれてもな。
   ていうか、笑い上戸を直すのを手伝ってやってんのに。
   なんなら親切心のかたまりと呼んで崇めたてまつるべき。

僕:ちょっとは悪びれなよ。

あかり:ふひっ…はぁ…はぁぁ……あ゛ーもう、やっと落ち着いた…
    ちょっとあんたたちねぇ、さすがにご飯食べてるときは勘弁して頂戴!

明来:勘弁してやろう。

僕:ねぇ待って、あんた「たち」ってことは やっぱり僕も含まれてるの!?

あかり:そーよ!毎度毎度そのキレッキレのツッコミするのをやめなさいったら。

僕:う…ご、ごめん…

明来:そうだそうだ!気を付けろバカヤロ コノヤロ!

僕:おまっ…!……抑えろ…ツッコむな…。

あかり:サンドイッチが喉に詰まったらどーしてくれんの、まったく…モグモグ…

明来:サンドイッチが鼻から出ないように押さえててやってもいい。

僕:なぜ鼻。

あかり:んぶっ、


【SE:猫の鳴き声】


ナレ:しばらくお待ちください。


明来:だから言ったのに。

僕:ホントに鼻からサンドイッチが出た…

あかり:うぅぅ…鼻の中にタマゴフィリングの独特な臭いがぁ…もうやだぁ…もう帰るぅ…

僕:ご、ごめん…ホントごめん……

明来:全自動ツッコミマシーン2号くんめ。

ゆかり:お姉ちゃん、ティッシュだよ。お茶、もっといる?

あかり:えぅー…あいがと……

明来:美しき姉妹愛。尊い。最の高。


ナレ:分かる。


【SE:チャイムの音】


僕:ん…予鈴だね。

明来:そうだね。予鈴だね。

あかり:んっふ…

僕:戻ろっか。

明来:戻るっぺよ。

僕:どこだっぺよお前の生まれはよ。

あかり:フフ…クフフ…もうやめヒヒヒ…

ゆかり:お姉ちゃん、しっかり…!

僕:ひ、久嶺さん大丈夫!?


ナレ:妹が姉を、少年がクラスメートを、ただ心から心配して寄り添った、まさにその時だった!


ゆかり:あっ…

僕:ん…?あっ、


ナレ:それまでの漫才の流れを断ち切り最大瞬間風速で訪れるときめきのメモリアール!
   偶然に近づく顔と顔、意図せず触れ合う二人の手と手!!
   目と目が合う瞬間好きだと気付……


僕:……うぅん…うん…。

ゆかり:あぁ…んん…。


ナレ:気付くには、漂うタマゴ臭がすこぶる邪魔であった。


ゆかり:あっ、あのっ、僕くん先輩!


ナレ:おおっとめげなぁい!
   これは何だぁー?告白かぁー!?ラブコメなのかぁー!?


僕:あっ、はい!なんでしょうか!!

明来:なんで敬語でしょうか!!

あかり:ぶっふ…

ゆかり:あのっ…今度のお休みに、その…

あかりM:くっ…これは大チャンス!
     よし行け、言うのよゆかり!練習通りに!
     秘めたる想いを言葉に乗せるのよ!!

明来M:激アツ!!


ナレ:落ちつけ外野ども!まだだっまだだっ!!


ゆかり:わっ、私と…遊びに行きませんか…?
    ゆ、遊園地!とか…行きませんか…!


あかりM:言ったぁー!

ナレ:行ったー!

明来M:行ったか!

ナレ:おいやめろぉー!たとえ心の中でもフラグを立てるなコラァー!


僕:今度の週末?うん、いいよ!


あかりM:やったぁー!!

明来M:やったか!

ナレ:おいって。


ゆかり:ほ、ホントですか!

僕:うん!あっ、じゃあみんなで僕んちの遊園地行こうよ!

ゆかり:はっ、はい!……えっ、みんな?


あかりM:あっ…

明来M:あーあー…


僕:うわぁぁ…念願のイベント「友達と遊園地」だぁ…!実は今までなかったんだよね!
  やっぱり遊園地は気の合う友達とみんなでわいわいだよねー!

ゆかり:あっ………はい。


ナレ:テンショングラフの反比例たるや。


僕:じゃあさ、さっそく今日の放課後いろいろ決めよっか!
  えへへ…楽しみだなぁ…♪

明来:ハァ……ホントに持ってないなお前って奴は。

僕:ヒトが喜びに浸ってるときにいきなり何てことを言いだすんだよコノヤロウ。
  ほら、早く戻るよ。

あかり:ちょっとゆかりぃー?なーんであそこでヘタレるのよ!
    練習とはちょっと違えど、勝ち確定の流れだったでしょーが…!

ゆかり:アハハ…また今度でいいよ。どっちにしても、まだ二人きりなんて緊張しちゃう。
    それに僕くん先輩、みんなで遊びにいくの凄く嬉しそうだったから…だから、いいの。

あかり:あんたねぇ……


- 噴水広場 ベンチ -


ナレ:回想終了。
   そんなハーレムラブコメ作品の主人公の如き朴念仁(ぼくねんじん)っぷりを
   発揮した少年の優雅な読書タイムも、そろそろ終了の様相。


僕:………ふー。やっぱりいいなぁ、〇〇〇〇。(←あなたの好きな本のタイトルをどうぞ)
  (その本の魅力を簡潔に語ってください。)

ゆかり:その本…先輩も好きなんですね。

僕:そりゃあもう、大ファンですから…ってホエーイ!?


ナレ:思わずプロテインに含まれてそうな成分の名前を叫びながら飛び上がったぁー!!


ゆかり:あっ、ごっ、ごめんなさい!おどかすつもりは…

僕:いっ、いつからいたの…!?

ゆかり:10分ほど前から…何度か声をかけたんですけど、すごく集中してたので…

僕:いや、その…全然気付かなかった…


ナレ:ニブチンめ。


ゆかり:あはは…ところで先輩、お姉ちゃんはまだ来てませんか?

僕:えっ?いや、見てないけど…というか気付けてないだけかもだけど。
  いっしょじゃないの珍しいね。

ゆかり:はい…お姉ちゃん、今朝はかなり早く出発したんです。
    朝の6時に飛び起きて…


あかりM:ゆっかりぃ!
     おねいちゃん、ちょっとおねいちゃんとして大事な用事があるから先に行くから!
     すっごく大事な用事だから!仕方ないから!


ゆかり:って言いながら忍装束に着替えて、サムズアップで飛び出していきまして…

僕:忍装束で何しに行くの!?というかなぜ持ってるの忍装束!!

ゆかり:ノンケで買ったって言ってましたけど…

僕:何でもありだなノンケ…


ナレ:何でもそろって便利なお店!激安熱帯雨林・ノンキホーケ!!
   略して「ノンケ」である。
   ……えー…何故だかは分かりませんが、ヒトは大人になると、
   この店を「ノンキ」と略すようになります。
   何故だかは分かりませんが。


ゆかり:ウチの先祖は忍者だった、ってお母さんの冗談を真に受けたみたいで…

僕:まぁ確かに久嶺さんの身のこなし忍者っぽいけども…


【SE:メールだよ!】

ゆかり:あっ、ちょっとすみません…あっ、お姉ちゃんからメール…

【SE:バイブレータ音】

僕:あっ、僕も…ん?明来からだ。


あかりM:ゆかりごめ〜ん!ちょっと今日、急に行けなくなっちゃった><
     僕くんと楽しんできて〜♪


ゆかり:えっ…ひぇえ!?


明来M:すまん、ちょっと急用で行けなくなった。すまんジミー。


僕:誰がジミーだコラ。

ゆかり:あの、僕くん先輩…お姉ちゃんが今日ちょっと…


ナレ:突然のキャンセルラッシュに困惑する二人を、
   少し離れた草むらから見つめる2つの視線があった。


【SE:草の揺れる音】

あかり(小声):フフフ…どーよ、名付けて
       「ドキッ!?ドタキャンコンボでラブラブデート!!」作戦よ!!

明来(小声):このタイトルセンスのNASAよ。ナニ時代の猛者だよ。

あかり(小声):う、うっさいわね!
        現代モノの作品に時代考証なんてあってないようなもんでしょ!?


ナレ:ポケベルやPHSが出てくる現代モノに
   愛しさと切なさと心強さを感じて何が悪いというのか。


明来(小声):さて、このポロリ作戦は果たしてうまくいくのか。

あかり(小声):なーに言ってんの、「このまま二人でしっぽりデート」以外に
        どんな選択肢があるって言うのよ!

僕:えっと…じゃあ、また今度にしよっか。

あかり:っはぁぁああー!!!?

僕:うへわっ!?

明来(小声):オイオイオイ!


ナレ:思わず叫び声を轟かせたデバガメ1号!
   2号が慌てて口を押さえたが、判定は!?


僕:……ね、猫?


ナレ:セーフ!セーフです!!


あかり(小声):ムグ…くぉの…枯れ男がぁあ…!!

明来(小声):落ちつけ!まだだ!まだ終わらんよ!見ろ!!

あかり(小声):アァン!?……こっ、これは…!!


ナレ:2号の指が示す先…そこには奇跡の逆転劇。
   少女の勇気の左手が、少年の右手を握っていた。


僕:ゆっ…ゆかり…ちゃん?

ゆかり:先輩…わ、私と二人じゃ…ダメですか…?


あかりM、明来M、ナレ:ヤッターーーーーーーーーー!!!!



- 次回予告 -


ナレ:次回予告。


あかり:ゆかりぃぃぃぃあんたって子はぁぁあ!!
    土壇場で最高の口説き文句だったってばよぉぉおおおお!!!

ゆかり:お、お姉ちゃん、苦しいよ…

明来:物語の裏側で、いつの間にか育っていた恋心。
   果たして無垢なる少年は、彼女の想いを受け止めることができるのか。
   その行方を影から見守る、もうひとつの恋心。
   無限大のアツい想いを胸に、止まらない暴走が次元の境界を突破する!


ゆかり:『メイド イン フランチェスカ! 第十一話【乙女と恋と筋肉と!(仮)】』 。


僕:あの…フランチェスカさん、そこで何してるんです…?









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B台本倉庫へ行く!

C作者に物申す!(ツイッター)

D作者の部屋を物色する!