巫女猫「ムフフ〜ン…真っ先にあの白衣の奴を見つけ出して、姐さんに褒めてもらうっすよ〜!!」 マフラーを改造したバイクの音の如き足音を轟かせながら歩道をひた駆けるセーラー服の少女。 早川ふう「そこの暴走機関娘、止まりなさい!」 跡には草も生えない少女の走路の延びる先から、凛とした声が響き渡った。 道程を塞き止めて威風堂々、見るからに高貴なオーラ漂うお嬢様が立ちはだかっている。 巫女猫「あっ、危なーーーーーーい!!!!」 車と猫は急には止まれない。 会合の刹那、衝撃が球状に波紋を広げ、遅れて花火の打ち上げ音を思わせる衝突音が雲を叩いた。 巫女猫「うぅ…いたた……ハッ!?あぁぁ…やっちゃったぁ…人を轢いてしまったっす……!!」 土煙がもうもうと立ち込める中、ゆらり立ち上がると、少女は見る見る青ざめた。 少女の脳裏に、大好きな姐さんの声が蘇る。 春樹M「人がたくさんいるところでは、お前は走っちゃ駄目だ。     シャバに被害が出るからな。いいな。走るなよ?     いいな?絶対に走るなよ?振りじゃないからな?は・し・る・な・よ?」 巫女猫M「姐さん、分かりましたよぅ!そんなに何回も言わなくても大丈夫っすよぅ!      ウチこう見えて、記憶力は人の3割はありますから!」 春樹M「……お、おぅ。」 そんな大見得(?)を切った昨日の今日である。 これはおしおきを覚悟せねばならない。 巫女猫「おしおき……ふふ、ふふふ……」 早川ふう「……なぜ涎を垂らして恍惚としていらっしゃるの?」 ……何やら妄想が捗っている少女の元に、コツ、と甲高い音が寄る。 巫女猫「…ハッ!?いえ、寝てないっすよ!!」 早川ふう「そんなことは聞いておりません。」 先ほど盛大に轢かれたはずのお嬢様が、優雅に長い髪をなびかせながら姿を現した。 早川ふう「何かお急ぎのご様子とは察しますけれども、ここは公共の場でしてよ。      周囲に迷惑をかける暴走行為はおやめになって。      ただでさえ最近は治安が悪くて……」 くどくどくどくど。 巫女猫「うっ……な、なんかお説教が始まったっす…長くなりそうだし、ここはこっそりエスケープを…」 早川ふう「まだ私のお話は終わっていなくてよ。」 忍び足で通り過ぎようとした首根っこを、むんずと摘ままれる。 エスケープはあえなく失敗。 巫女猫「ひっ、ひぇえ!?悪かったとは思うけど、急いでるっす!邪魔しないでほしいっす〜!!」 早川ふう「そうはいきません。貴女がしっかり改心するまで、意地でもここを通しませんわよ?」 巫女猫「ど、どうしても行かないといけないっす!」 地を蹴り、体を捻って拘束から逃れると、少女は臨戦態勢をとる。 令嬢は一瞬目を丸くし、そしてその意を解して、冷淡な視線を少女へと突き刺した。 巫女猫「そ…そんな怖い顔しても駄目っす!姐さんのため、推し通るっすよ!!お覚悟!!」 早川ふう「いけない子……反省なさい!!」