ミッション☆プリン・ア・ラ・モード!




ミコネ♀:基本的に元気ハツラツ少女だがよく絶望する。テンションの高低差はマリアナ海溝の深さ並み。
     リアクションが大きいため、よく兄に弄られている。ご近所のアミとハイトとは幼馴染で仲良し。

ニイチ♂:ミコネの実兄。面白いことをさらに面白くすることに対して努力を惜しまない。
     ただし苦しい努力は極力したくないので、種を撒き状況を見守る観測者である。

アミ ♀:ミコネのことをお姉ちゃんと慕う幼馴染の少女。自分を大切に思ってくれるミコネが大好き。
     ミコネからは「みっちゃん」と呼ばれる。まとう雰囲気は冷静沈着だが、とてもがんばり屋。

ハイト♂:おとなしいフリをして何かとノリが良い幼馴染の少年。冒険心と好奇心が旺盛である。
     言葉の端々から、そこはかとなく弄られオーラが湧きだしているが、割と冷静な一面も。

チヤ ♂:ミコネの叔父。お菓子作りが趣味で、よくミコネたちにお菓子を作ってくれる。
     遠方へ出張しているが、出張先でも気分転換によくお菓子を作っている。今回は台詞なし。


↓配役表↓/♂2 ♀2






ミコネ:プリンが多い。

ニイチ:ほぅ。

ミコネ:チヤさんが送ってくれたプリンが多い。

ニイチ:食べきれ。

ミコネ:無理だよ!!どれくらいあると思ってるんだよ!!!

ニイチ:どれくらいあるん。

ミコネ:2リットル。

ニイチ:多っ……いのか?それは。

ミコネ:字面よりも相当多いからね?

ニイチ:なんで2リットルもらおうと思ったん…コンビニで売ってるみたいなサイズでもらえよ。

ミコネ:いちばん少ない単位が2リットルだったんだよ…6リットルもらってる人もいるよ…

ニイチ:6リットルて。

ミコネ:おいしいし、なんとか1割くらいは食べたけどさぁ…見てよこれ。

ニイチ:Oh…これはたしかにボリューミー…あ、しかもこれ牛乳プリンか。

ミコネ:この量のミルクプリン1日で食べきったら確実におなか壊す自信あるよ!!

ニイチ:その自信ほど持ってて意味ないものを兄は知らないわ。

ミコネ:ねぇ兄、お願いだよ…半分食べてよー!もらった手前、腐らせるわけにもいかないよー!!

ニイチ:仕方ない…

ミコネ:食べてくれるの!?

ニイチ:知恵を貸してやる。

ミコネ:食べてよー!!

ニイチ:兄は甘いモノはあまり食べない。



アミ:…で、呼ばれたのが私と…

ハイト:僕ですか…

ミコネ:お願い!手伝って!!何でもするから!!

アミ:えっ、今…

ニイチ:何 で も す る と は 言 っ て な い 。

ミコネ:みっちゃんのためなら何でもするもん!ハイトと兄のためにはしない。

ハイト:何も聞かずに助けにきた僕のためにも何かしてよ!

ミコネ:願いは聞くけど叶えるかどうかは審議する。

ニイチ:兄のためにも何かしろよ。知恵貸してやった恩を忘れやがって。

ミコネ:それはそれ。これはこれ。

アミ:あのね、お姉ちゃんの期待には応えたいんだけどね?
   私の胃袋の容量的な意味で、多分そんなに入らないと思うんだ…!?

ハイト:僕もさっきご飯食べたばっかなんだけど…

ニイチ:まぁデザートだから何とかしろ。

ハイト:けっこう食べたんだけど。

ニイチ:大丈夫。いける。男を見せろ。

ハイト:よく分からんけども。

ニイチ:あ、ちがうちがう。男を見せろっていうのはそういう意味ではなくて。

ハイト:言ってない!何も言ってない!!

ミコネ:とりあえず人数を集めたはいいけど、この量をさばける戦力じゃない気がしてきたよ…?

アミ:すごいね、これ……2リットルどころか、4リットル以上あるようにみえるんだけど…

ミコネ:あっ、うん…さっき電話したときには2リットルって言ったんだけどね?
    実は6リットルだったんだよね……

ハイト:どういうことなの。

ミコネ:チヤさんに電話して聞いたらね…他に6リットル頼んだ人がいたんだけど、
    送り先間違えてこっちに6リットル送っちゃったんだって…

ハイト:オーマイゴッド。

ミコネ:でも送り返すにも生ものだしさ?
    「いいよいいよ、そのまま食べてよ!」って言ってくれるしさ!?

ニイチ:そこで人海戦術というわけだ。

アミ:でもこの量を食べ切るのは…

ハイト:途中で飽きそう…

ニイチ:そのまま食べれば、まぁ飽きるだろうな。
    だが我々人類には、いにしえより脈々と受け継がれし、至高の叡智がついている。
    コレを見よ!!

ハイト:こっ、これは…!

ミコネ:ストロベリージャムに、ラズベリージャム…あっ、マーマレードに、レモンの蜂蜜漬けも!

ハイト:なぜ味噌があるのか…。

アミ:こっちはフルーツか…メロン、オレンジ、いちご…おお、チョコレートと生クリームも。

ハイト:なぜナスがあるのか…。

ニイチ:そう、ミルクと親和性の高い調味料や食材を加え、味わいを変化させることにより、
    みんなで「あっ、この組み合わせおいしい!」「意外とこれもあり!」なんて会話をしながら
    いつの間にか完食してしまおう戦術というわけだ!!

ミコネ:長いな。

ハイト:豆板醤………

ミコネ:すごい…これなら、なんかいけそうな気がしてきた…!

ハイト:えっ、でもこれってボリュームを増やすことにムグッ!?

ニイチ:いけるさ!いけるとも!!さぁゆけ妹よ、白き大地を喰らい尽くすのだ!!

ミコネ:よぉーーーーーっし!じゃあ私、メロンと、オレンジと、ストロベリージャム!!

アミ:じゃあ私はレモンにしよっかな…

ミコネ:おぉー!おいしーい!フルーツの酸味がミルクプリンの甘味と不思議な奇跡でクロスしてる!

アミ:あっ、おいしい…というかふつうにプリンがおいしい……

ニイチ:ほれほれ、ハイトも食べなさいな。
    育ち盛りなうちにいっぱい食べておかないと、うちの妹のようになるぞ!

ハイト:無理だよ!!あそこまで縮めないよ!!

ミコネ:こらぁー!そこぉー!身長の話はやめろー!



アミM:…こうして始まった、プリン・ア・ラ・モード大作戦。
    一種の興奮状態から来るハイテンションのおかげか、序盤で一気に半分を消化。
    この調子なら行ける!
    そんな予感が漂い、希望に胸を膨らませた我らが軍勢は、
    十分後、絶望に腹を膨らませることとなった。



ミコネ:無理。

ニイチ:諦めたらそこで試合終了ですよ。

ミコネ:無理。

ハイト:の…残り5分の1くらいだよ……

ミコネ:無理。

アミ:うん、どの組合せもだいたい美味しかったよ…
   でも全部甘いよ…甘いんだよ…!!

ミコネ:うわーーーん無理だーよーーーーーー!!
    味は違ってもベースが同じでずっと甘いもの食べ続けるの無理だよーーーー!!

アミ:せめてしょっぱいものと交互に食べられれば…

ハイト:しょっぱいもの………

ニイチ:そうだ。そのための。

ハイト:馬鹿な…合うというのか……?

アミ:…ハイト?

ハイト:ミルクプリンに、こんなものが合うと…そう言うのか!!

アミ:あっ、ちょっと、それ味噌…!

ニイチ:そう…先人の知恵は偉大だ。
    だがしかし、振り返った先には足跡があるばかり。
    我々もまた、未来へ叡智を繋ぐため、未知を拓く者となるのだ!!

ハイト:うぉぉおおおおおっっ…顕現!!
    ミルクプリン・アラモード!!モード・オミッソ!!!

ミコネ:ミルクプリン…アラモード……

アミ:モード…オミッソ…?

ニイチ:ちなみにオミッソとはラテン語で「行方不明」という意味だ。

アミ:すごく迷走の果てに辿り着いたモード感あるね!?

ハイト:…いただきます。

ミコネ:ゴクリ……

ハイト:……………………ん!?こっ、こっ、これは……おいっしい!!?

アミ:うっ、うそ…!?

ハイト:いやっ、えっ、これおいしいよ!?

ミコネ:いやいや待て待て!!絶対嘘だろ!!

ハイト:嘘じゃないよ!ミルクと味噌がクリーミーに溶け合って…んぐっ……でも、甘さだけじゃない……
    アミも、ほら!

アミ:うっ…じゃ、じゃあひと口だけ……ぁむ。

ミコネ:…み、みっちゃん……どう……?

アミ:…………おいしい。これなら別腹でいけるかも……!

ミコネ:ほ、ホントに…!?

ハイト:大丈夫、ミコネさん。

アミ:はい、お姉ちゃん。

ミコネ:あっ、う……うん、信じる。……………はむ。

ニイチ:その一歩を踏み出した者が…信じた者のみが、新たな光を掴むのだ。

ミコネ:………っ、これはなに…!?今までに出会ったことのないやさしい味わい…!!
    味噌の香りが、これまでずっとベースにあった甘味を、まったく新しい次元へ昇華してる!?
    まろやかさが体をとろかしていく……すごい、こんなの初めて…!!

アミ:どう、かな…お姉ちゃん。

ミコネ:……最、高。

ニイチ:さぁ…新たな境地を開いたお前たちに最早敵などいない!

ハイト:いっしょに進もう。あと少しだ!

アミ:頑張ろ、お姉ちゃん!!

ミコネ:よぉっしゃあああ、ラストスパートォォーーーーーーー!!!



ハイトM:それから10分後…僕たちはとうとう成し遂げた。
     6リットルものミルクプリンという巨大な城を、跡形もなく喰らい尽くしたのだ。



ミコネ:完っ、食ーーーーー!もう無理ーーーーーーー!!

ニイチ:お疲れさん。飲み物いる?

ミコネ:い゛ら゛な゛い゛

ハイト:最後の方、ペース上げすぎてさすがにキツかったよね…
    もうしばらくプリンはいいかな……

ミコネ:それな。ホンマそれな。

アミ:うぷ…お姉ちゃん、がんばったね…よしよし…

ミコネ:あぁぁーーーー!みっちゃんもいっぱい頑張ったねーーーーーー!!

アミ:あっ、ちょっ、ストップ!今は抱きしめないで…!!

ミコネ:あっ…はい…私も無理だ…!!



ニイチM:かくして、彼らは伝説となった。
     6リットルのミルクプリンと、各種フルーツをたいらげた胃袋は、
     その形をぽっこりと腹に浮き彫りにしていて、まるで誇り高き勲章のようでもあった。

     そして、翌日。



ミコネ:お腹壊した。

ニイチ:ほぅ。

ミコネ:プリンの食べ過ぎでお腹壊した。

ニイチ:壊 さ な い と は 言 っ て な い 。

ミコネ:騙された!兄のテンションに流されて騙されたぁ!!

ニイチ:これが社会の厳しさというもの…兄は妹の未来を案じて、あえて心を鬼にして…

ミコネ:……ホントのところは?

ニイチ:お前すっげー面白いね!いじりがいある!!

ミコネ:こんのやろーーーーーーーーーーーーー!!!

【SE:インターホン】

ニイチ:NO−−−!あっ、ほら!ピンポン鳴ってる!!誰か来てる!!

ミコネ:ぐっ、ぬっ…そういえばみっちゃんが来るんだった……くそぅ、覚えてろよ!!

ニイチ:キヒヒ…やれやれ、ホントあきない妹だわ。



ミコネ:はーい!お待たせ!!

アミ:あっ…アハハ…お姉ちゃん、ハロー。

ミコネ:うわーん!みっちゃーん、待って…た……
    ……みっちゃん、その手に持ってるタッパーって、なんかすごく見覚えあるんだけど……

アミ:うん、その…私も頼んでたの、忘れてたんだよ、ね……

ミコネ:ガッフゥ!!

アミ:ごっ、ごめんね!?でも、ちょっとこの量、やっぱり一人じゃ食べきるのは……

ミコネ:あぁぁ…うぅぅ……

アミ:今これを持ち出すのずるいって分かってるけど……こないだお姉ちゃん、何でもするって……

ミコネ:うわぁーーーーー何でもするよぉぉぉおおーーーーー
    大好きなみっちゃんのためなら何でもするんだよぉぉぉーーー……


ニイチM:人生とは、旅路である。
     苦難を超えて得る幸せがあり、その先には再び苦難がやってくる。
     繰り返す営みの中で、かけがえのないたくさんの仲間たちと出会い、旅人たちは成長するのだ。
     互いに影響しあって新たな味わいを生み出すプリン・ア・ラ・モードのように。









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